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【世界の街から】ラブレター

 中国の人々が月見を楽しむ中秋節が明けた昨年10月上旬、あなたとの不思議な出会いがありました。私が上海支局で約3年間の任期を終える間際の出来事でした。

牧草を食べる白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
牧草を食べる白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
記者の家に来たばかりの白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
記者の家に来たばかりの白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
両脚を投げ出してテレビを見る白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
両脚を投げ出してテレビを見る白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
牧草を食べる白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
記者の家に来たばかりの白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)
両脚を投げ出してテレビを見る白ウサギの「ミミ」=2023年10月、中国・上海(共同)

 車がせわしく行き交う上海の幹線道路を電動バイクで走っていると、路傍の植え込みからふわふわの白ウサギが顔を出しました。初対面だったのに、どうしてあなたは、ちゅうちょなくぴょこぴょこと近寄ってきたのですか。「このままではひかれてしまう」。抱き上げて、一時的に保護すると決めました。
 「ミミ」と名付けたのは、耳だけ少し黒かったからです。牧草をすごい勢いで食べ、翌日には水も飲めるようになりましたね。とてもホッとしたのを覚えています。ベビーマットの上で両脚を投げ出してテレビを見ている姿は、子どものようで愛らしかったです。
 あなたは知らないでしょう。急な出張でも預けられるよう私がペットホテルを下見した事を。餌を買いに訪れた店でウサギ肉を使った犬猫用フードに驚いた事を。一緒にいられたのはたった数日でしたが、あなたを深く愛していたことを。
 未明にあなたが突然動かなくなった時、私はうろたえました。自然界で弱い立場のウサギは敵から身を守るため不調を隠すそうですが、予兆に気付けなかった自分を責めました。上海では無断での埋葬が許されていないと聞き、火葬業者に引き取ってもらいました。お墓がなくて、ごめんね。
 中国では今、中間層が拡大し、動物を飼う若者が急増しています。一方、春節(旧正月)の帰省で長く家を空ける前にペットを捨てる人が相次いでいるとの報道も目にします。全てのペットが「家族」と認識され、幸せに暮らせるよう願うばかりです。(上海共同=渡辺哲郎)

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