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【日本の対ロシア外交】圧力堅持、欧米と足並み 領土交渉見据え対話余地

 日本政府は、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対し、欧米諸国と足並みをそろえ制裁で圧力をかける基本方針を堅持する。同時に、ロシアが実効支配する北方領土の帰属や平和条約を巡る交渉が可能になる局面を見据え、日ロ対話を進める余地も残したい考えだ。ウクライナ支援を続けつつ、ロシアとも将来的な懸案解決を目指すという二兎を追う外交の成否は、見通せない。

共同記者発表を終え、握手するウクライナのシュミハリ首相(左)と岸田首相=19日、首相官邸
共同記者発表を終え、握手するウクライナのシュミハリ首相(左)と岸田首相=19日、首相官邸
ウクライナに侵攻したロシアに対する日本政府の主な動き
ウクライナに侵攻したロシアに対する日本政府の主な動き
共同記者発表を終え、握手するウクライナのシュミハリ首相(左)と岸田首相=19日、首相官邸
ウクライナに侵攻したロシアに対する日本政府の主な動き

 ▽ボディーブロー
 「一日も早くロシアの侵略を止めるべく、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進してきた。日本は領土一体性を確保するウクライナの努力を引き続き支持する」
 19日夜、日ウクライナ経済復興推進会議後の共同記者発表で、岸田文雄首相はロシアによる侵攻を容認しない姿勢を強調した。
 2022年2月の侵攻開始以降、日本は先進7カ国(G7)各国や欧州連合(EU)と連携して、ロシアの金融機関を対象とした資産凍結などの制裁を科してきた。武力を行使して他国領を侵害する前例を認めてしまえば「力による現状変更がまかり通る世界になってしまう」(外務省幹部)との危機感が背景にある。
 日本はロシアと北方領土問題、中国とは沖縄県・尖閣諸島を巡る対立を抱えている。仮に中国と台湾が軍事衝突に発展すれば、日本に重大な影響が及ぶのは必至。首相が「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返すのは、周辺国が領土的野心を強めてくる展開を警戒するからだ。
 日本政府関係者は「欧米と制裁を続ければ、必ずボディーブローのように効いてくる。いずれ停戦交渉になっても、ロシア有利の形で終わらせてはならない」と力説した。
 ▽仕掛け
 一方で日本政府は侵攻終結後をにらみ、北方領土や平和条約締結交渉に向けた関係を途絶えさせないよう腐心している。
 ロシアの反政府活動家ナワリヌイ氏の死亡を巡り「確定的な情報を有していない」(林芳正官房長官)として、プーチン大統領の責任を非難する欧米諸国から一定の距離を置いている。
 極東や北極圏でのロシアの天然資源開発事業では、日本企業に撤退を促さず権益を維持。中断している北方領土元島民らの「北方墓参」を重視し、ロシアに再開を要請している。対話の機運や具体的な協力案件といった「仕掛け」を残すことで、停戦後の対ロ交渉が進めやすくなるとの思惑が透ける。
 プーチン氏は日本の制裁が関係悪化の原因だとして、態度を硬化させている。それでも日本外交筋は「ロシアと一定の意思疎通はできている。隣国である限り対話は続ける」と繰り返した。

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