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【衆院政倫審】裏金「弁明」へ出席ドミノ 幹部限定、暴露警戒

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会の開催へめどが付いた。安倍派幹部がドミノ倒しのように出席意向を固めたためだ。とはいえ派内には若手を中心に、裏金問題の説明が不十分な幹部への批判が根強い。衆院議員51人の出席が必要とする野党の要求は退け、弁明の場に出るのは幹部に限定し、不満の暴露を抑え込もう―。政倫審開催を巡る一連の経緯には、そうした岸田政権の警戒感が透けて見える。

国会内で記者団の取材に応じる西村前経産相=21日午前
国会内で記者団の取材に応じる西村前経産相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
国会内で記者団の取材に応じる立憲民主党の安住国対委員長=21日午前
国会内で記者団の取材に応じる立憲民主党の安住国対委員長=21日午前
自民党が想定する国会日程
自民党が想定する国会日程
国会内で記者団の取材に応じる西村前経産相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
首相官邸に入る岸田首相=21日午前
国会内で記者団の取材に応じる立憲民主党の安住国対委員長=21日午前
自民党が想定する国会日程

 ▽窮余の一手
 「前進だ。昨日は『話にならない』と言ったが、少しは話ができるようになった」
 21日、国会。自民の浜田靖一国対委員長との会談を終えた立憲民主党の安住淳国対委員長は、政倫審開催へ譲歩してきた自民を一定程度評価した。安倍派「5人組」の松野博一前官房長官と西村康稔前経済産業相、高木毅前国対委員長の出席意向が伝えられたためだ。
 自民は前日、安倍派座長を務めた塩谷立元文部科学相と二階派の武田良太事務総長の出席を提案し、安住氏から突っぱねられた。このままでは2024年度予算案の審議に影響し、23年度中の自然成立が確実な3月2日までの衆院通過が困難になる―。自民執行部に焦りが募った。
 窮余の一手は、野党が特に強く求めていた松野氏らの出席しかなかった。党幹部が検討した結果「安倍派の裏金問題に関与し得る立場の事務総長経験者の出席が不可欠」と判断。茂木敏充幹事長、森山裕総務会長らが20日、松野氏らに出席を促した。
 ▽口火
 口火を切ったのは西村氏だ。20日夜、党幹部に出席する考えがあると伝達。21日には「私の知っていることを全て正直に話したい」と記者団に表明した。慎重姿勢の高木氏、明言を避けていた松野氏も雪崩を打つように出席する決意を固めた。
 自民幹部は「世論の圧力を感じて、西村氏を皮切りに『俺も出る』との決断に傾いた。連鎖反応だ」と打ち明ける。
 だが野党は、松野氏ら5人を含む51人が政倫審に出席すべきだと主張していた。自民ベテランは「そんなことをできるはずがない」と強調する。
 「トップが腹を据えるべきだ」「派閥の上に立つ人間が責任を取らないといけない」。裏金事件を受け、政治資金収支報告書に不記載があった議員らに行った自民の聞き取り調査結果は、安倍派幹部への恨み節のオンパレードだった。ある中堅は「私も政倫審に出る覚悟がある」と意気込む。
 ▽手ぐすね
 仮に不満を抱く若手、中堅にまで出席を認めればどうなるか。閣僚経験者は「感情的な言葉を並べ、予想できない受け答えで審議が紛糾し、野党の思うつぼになりかねない」と踏む。野党が求める二階俊博元幹事長の出席についても、自民執行部の一人は「出してはいけない。答弁が不安で、何を言い始めるか分からない」と周囲に語る。
 野党は原則非公開の政倫審に関し、公開すべきだと訴える。裏金事件の実態を解明するため、松野氏らの答弁次第では、参考人招致や偽証罪に問われる証人喚問の実施を迫るなど「二の矢、三の矢を放つ」(立民幹部)と手ぐすね引く。
 予算案の衆院通過をにらみながら、与野党が繰り広げる神経戦。自民重鎮はうめく。「正念場はしばらく続く。裏金国会は耐えるしかない」

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