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【企業のロシア事業】千社超が撤退や停止、縮小 結び付き、一段と弱まる

 ロシアの侵攻が続くウクライナの復興に向け日本は官民で支援を強化する方針だ。一方、ロシアから日本や米欧の企業が引き揚げる動きは後を絶たない。米エール大の調査では、20日までに世界の千社超がロシアでの事業について、撤退や停止、縮小をした。日本企業は引き払っていなくても機械の保守といった最低限の業務を続ける程度にしている場合が多く、企業のロシアとの結び付きは一段と弱まりそうだ。

主な日本企業の対応状況
主な日本企業の対応状況

 ▽5段階評価
 エール大は1500社超を5段階で評価した。「撤退・縮小せず」は218社で、中国企業が多い。「新規投資や開発の抑制」が175社、「事業縮小」が155社、「事業の停止」が503社。「撤退」は538社で、トヨタ自動車や日産自動車がリストに名を連ねる。
 西側企業の撤退は自動車、IT産業から外食、食品に及ぶ。ロシア進出が冷戦終結の象徴とされたマクドナルドは2022年にロシアの全店閉鎖の方針を表明した。
 ▽最低限
 日本企業の動向を見ると、いすゞ自動車は23年7月に株式を譲渡して撤退した。工場は譲渡先の現地メーカーが引き継いだ。商社の兼松はモスクワの駐在員事務所を休眠させた。AGCは23年に撤退方針を打ち出し、ガラス事業の譲渡先の選定を続けている。
 コマツはロシアでの建設機械の生産やロシア向け輸出を停止した。安全性確保のため、現地で調達した部品による保守のサービスは継続する。横浜ゴムは原材料調達難から数カ月間操業を止めたが、22年中に生産を再開した。従業員の雇用確保を考慮したとみられ、最低限の事業を続ける。
 ▽事業継続
 三井物産と三菱商事はロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益を維持する。三菱商事の中西勝也社長は「政府と連携しており、単独で行っているわけではない」と語る。
 日本たばこ産業(JT)はロシアで製造・販売を継続し、現地でのたばこのシェアで約4割を占める。寺畠正道社長は「現時点で事業継続に関して大きなネガティブな要因はないと認識している」との考えだ。
 ウクライナでは戦時下でも日本企業の出資先が事業を展開。日立製作所が21年に買収した米IT企業グローバルロジックは、ウクライナの拠点に23年4月時点で約7千人の従業員を抱える。テレワークを活用して現在はほぼ通常通りに勤務し、日立広報は「高い技術力でグループに貢献している」と説明した。(ニューヨーク、東京共同)

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