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【ミュンヘン安全保障会議】米支援不透明、懸念拭えず トランプ氏が陰の主役に

 間もなく2年となるロシアのウクライナ侵攻が主要議題となったミュンヘン安全保障会議は、支援先細りへの懸念が拭えないまま幕を閉じた。最大の後ろ盾である米国の追加支援はまとまらず、会議開催中にウクライナ軍が東部の要衝から撤退。暗雲が垂れ込める中、11月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領(77)が会議の「陰の主役」となった。

ウクライナのゼレンスキー大統領(左)と共に記者会見に出席したハリス米副大統領=17日、ドイツ・ミュンヘン(ロイター=共同)
ウクライナのゼレンスキー大統領(左)と共に記者会見に出席したハリス米副大統領=17日、ドイツ・ミュンヘン(ロイター=共同)
米大統領選に向け選挙集会に参加したトランプ前大統領=17日、ミシガン州デトロイト近郊(AP=共同)
米大統領選に向け選挙集会に参加したトランプ前大統領=17日、ミシガン州デトロイト近郊(AP=共同)
ウクライナのゼレンスキー大統領(左)と共に記者会見に出席したハリス米副大統領=17日、ドイツ・ミュンヘン(ロイター=共同)
米大統領選に向け選挙集会に参加したトランプ前大統領=17日、ミシガン州デトロイト近郊(AP=共同)

 ▽演出
 「同盟国との約束を放棄し単独行動を優先することが、米国民にとって最善の利益であるとする世界観は危険だ。米国を弱体化させ、世界の安定を損なう」。初日の16日に演説したハリス米副大統領は語気を強めた。
 ハリス氏はミュンヘンで、「米国第一」を掲げ、ウクライナ支援に否定的で同盟国を軽視した言動を繰り返すトランプ氏との違いを強調。議会でのウクライナ支援予算通過もままならず、主導的役割を果たせない米国への不安を打ち消すと同時に、大統領選を見据え国際舞台で自身の手腕を示そうとした。
 トランプ氏は共和党候補指名が確実視され、本選で民主党のバイデン大統領(81)と再対決する可能性が高い。バイデン氏は高齢への不安が拡大。ハリス氏は職務継承順位1位の副大統領として自らの能力を誇示し、国内の有権者にもアピールする狙いがあった。
 17日にはウクライナのゼレンスキー大統領と並んで記者会見。「ウクライナが必要とするものを確実に受け取るようにする計画しかない」と言い切り、強い指導者としての演出を図った。
 ▽もしトラ
 「もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら一体どうなるのか」。トランプ氏の支持率は全米でバイデン氏と拮抗しており、トランプ氏の勝利は「現実的な問題」として欧州では不安が広がる。
 トランプ氏は会議前の10日、防衛費を十分に負担していない北大西洋条約機構(NATO)の同盟国を守らない考えを示唆し揺さぶりをかけた。NATOのストルテンベルグ事務総長は、加盟国の3分の2に近い18カ国が、国防費を国内総生産(GDP)比2%とする目標を今年は達成する予定だと反論。ドイツやフランスの国防相も2%に到達する見通しだと明らかにした。
 会議ではトランプ氏を意識したやりとりが相次いだ。オランダのルッテ首相は17日、各国で焦りが生まれていると指摘。トランプ氏に言われるまでもなく主体的に防衛費を増やさなければならないとして「泣き言を言うのはやめるべきだ」といら立ちをあらわにした。(ミュンヘン共同=木梨孝亮、桜山崇)

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