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頭脳警察が最後のアルバム 地球に別れ、パンタの遺言【ワーオ!】

 昨年7月に73歳で亡くなったロックバンド「頭脳警察」のボーカル、PANTA(パンタ)が、パーカッションを担当する盟友のトシこと石塚俊明や若手のメンバーと手がけた最後のアルバム「東京オオカミ」が発売された。

 はるか昔、荒野だった東京をオオカミが駆け回っていた―。そんな風景を描く冒頭の「東京オオカミ」はパンタが「吠(ほ)え続けろ」と連呼する疾走感あふれる曲。マネジャーの田原章雄は「反逆と、滅びるものへの鎮魂がテーマだった」と語る。
 2021年に余命宣告を受けた直後から制作を始めた。「泣き言や愚痴は聞いたことがない。しんどい顔も見せなかった」とトシ。思いは音楽で伝えたのだろう。アルバムの最後を飾る「絶景かな」では「笑って手を振るだけさ」とパンタが鮮やかに別れを歌う。
 「かっこいいじゃないですか、高い山の上から『絶景かな』って地球を見下ろしているみたいで。パンタの遺言だと受け取った」とトシは言う。
 高校時代、バンド活動を通じて知り合った2人。学生運動が盛り上がる時代に「世界革命戦争宣言」や「銃をとれ」といった政治性の強い曲が支持された。「こっちはただ普通に音楽をやってただけなんだけど、時代につくり上げられちゃったんだろうね。特別なことはない、その当時の若者だったんですよ」
 「ふざけるんじゃねえよ」といった直情的な叫びを性急なビートに乗せ、日本語ロックの黎明(れいめい)期を切り開いた。過激さで注目されたが、その音楽の神髄は口ずさみやすく美しいメロディーにあるのかもしれない。「いいメロディーでしょ? あれは本当に才能だと思う。俺は昔からパンタのファンなのかもしれないね」。ほほ笑むトシの顔は寂しそうで、どこか誇らしげでもあった。(森原龍介・共同通信記者)

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