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【日本GDPが世界4位】力強さ欠き、さらに後退か 人手不足深刻、賃上げ焦点

 日本の国内総生産(GDP)が半世紀ぶりにドイツに抜かれ、世界4位に転落した。円安の影響が大きいとはいえバブル経済崩壊以降、力強い成長を実現できなかった帰結で、今後も順位を下げ続けるとの予測もある。足元は物価高で消費が弱い上、人手不足も深刻化。賃金が持続的に上昇するかどうかが景気浮揚に向けた焦点になる。

GDPランキング予測
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 ▽コストカット経済
 「さらなる構造改革をしなければならない」。新藤義孝経済再生担当相は15日の記者会見でドイツに抜かれたことを問われ、悔しそうに語った。
 日本は1968年に当時の西ドイツを抜き「世界2位の経済大国」へ躍進した。世界で存在感を高め、バブル期は三菱地所がロックフェラーセンターを持つ米企業を、松下電器産業(現パナソニック)が米娯楽大手MCAをそれぞれ買収する派手な動きも見せた。
 だがバブル崩壊と金融危機を経て、企業はリスクを取らなくなった。設備投資を極力抑えてリストラを繰り返し、デフレも長引いた。いわゆる「失われた30年」で、岸田文雄首相はこの時期を「コストカット経済」と表現する。中国は2010年に日本を抜いた。
 東西ドイツは1990年に統一した。その後の経済は混乱もあったが「2000年代にシュレーダー政権が労働市場を改革し、女性や高齢者を含めて就業者数が増えたことが今日の成長につながった」(日本の内閣府幹部)との見方が多い。欧州連合(EU)単一通貨ユーロの採用も追い風となった。
 ▽世界12位
 日本のGDPは50年に世界6位、75年には12位に低下する―。米金融大手ゴールドマン・サックスは1年ほど前にこんな予測を公表した。人口の増加を経済力の土台とみており、50年のGDPは上位から中国、米国、インド、インドネシア、ドイツ、日本になると見込む。75年に日本は、ナイジェリアやパキスタンなどにも抜かれるという。
 成長に処方箋はあるのか。経済財政諮問会議の民間議員、BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部の中空麻奈副会長は、脱炭素分野などの産業振興が鍵だと指摘する。同じく民間議員の柳川範之東大大学院教授は「スタートアップ(新興企業)育成による技術革新の促進」を訴える。
 ▽倒産1・9倍
 少子高齢化を背景とした人手不足は日本経済の「構造的な課題」(新藤氏)だが、デフレからの完全脱却を狙う中で深刻さを増している。日本商工会議所が1月に実施した中小企業アンケートで、人手が不足していると回答した企業は3分の2に上った。建設や運輸、介護・看護、宿泊・飲食などの業種で7割超の企業が不足と答えた。
 帝国データバンクによると、人手不足による企業倒産は23年、前年の約1・9倍の260件と13年以降で最多になった。みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストは、労働力不足が「成長の制約要因になる」とみる。需要が増えても人手が足りず、対応できない事態に陥りかねない。
 消費の拡大だけでなく人材を確保する面からも重要なのが賃上げだ。物価変動を考慮した実質賃金は、23年12月まで21カ月連続で前年同月より減った。労働者の7割を擁する中小企業の持続的な賃上げが欠かせず、今春闘の結果が日本経済の行方を占う試金石となる。

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