テーマ : 読み応えあり

【能登地震・農業被害】避難長期化で担い手減懸念 復旧見通せず「維持が…」

 能登半島地震では石川県内の農地や農業関連施設に大きな被害が出た。作付け時期までの復旧は見通せず、農家は不安を募らせる。自宅損壊により避難する農家は多く、「離れた所で長期の避難生活が続けば、田んぼは維持できない」との声も。離農を検討する人も出始め、担い手の減少が懸念される。

能登半島地震で壁面が崩れた農業用ため池を見つめる市保羊作さん=7日、石川県珠洲市
能登半島地震で壁面が崩れた農業用ため池を見つめる市保羊作さん=7日、石川県珠洲市
能登半島地震による田んぼの被害を見て回る市保羊作さん=7日、石川県珠洲市
能登半島地震による田んぼの被害を見て回る市保羊作さん=7日、石川県珠洲市
能登半島地震で壁面が崩れた農業用ため池を見つめる市保羊作さん=7日、石川県珠洲市
能登半島地震による田んぼの被害を見て回る市保羊作さん=7日、石川県珠洲市

 「こんなに壊れていると、今年は難しいかな」。コシヒカリを育ててきた珠洲市正院町の市保羊作さん(75)がため息をついた。農業用ため池の壁面が崩れ、むき出しになった土肌には亀裂。「農業を続けたいが、水がたまらないとどうしようもない」とこぼした。
 「全壊」と判定された自宅で暮らし続ける市保さんは、市内の仮設住宅での生活を望むが、入居時期は見通せず、子どもが住む金沢市周辺でアパートを借りることも検討している。周囲の農家には、市外に避難し離農を決めた人も。「田んぼは3年やらないと駄目になる。残った農家だけで、どこまで面倒を見られるだろうか」と心配する。
 大規模な液状化現象が起きた内灘町。川辺俊一さん(80)は「これほどひどいことになるとは夢にも思っていなかった」と話す。15ヘクタールほどの田んぼでコシヒカリやもち米を育て、畑も耕すが、取水するパイプラインは破損し、排水用のU字溝の多くがひっくり返った。地震発生時、畑から1メートルほどの高さまで水が噴き出し、水浸しになった。
 川辺さんが代表を務める地域おこし団体は、もち米に自家製ピーナツなどを混ぜた「内灘餅」を製造しており、出荷を求める常連客の声に押され、1月中旬に再び生産にこぎ着けた。ただ、田植えは5月までに関連設備が修復されなければ難しい。「新型コロナウイルス禍で落ちた売り上げが戻ってきたところで、この震災。米作りが生きがいだったが、これからが不安だ」
 石川県がJAと連携して営農継続の意向調査を進める中で、小規模農家からは「農業用機械がダメージを受けた」などとして続けるか悩む声が上がっているという。高齢の農家が新たな投資をして再開する難しさはあるが、県生産振興課の葛城正浩課長は「一人でも多くの農家が作付けできるよう、きめ細かに支援していきたい」と話した。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞