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味や香り、伝わりやすく 「ごはん用語辞書」作成中 農研機構、企業と共同で

 「甘い香りでふっくら、こしがあってうまみを感じる」―。ごはんの味や食感を表す多くの言葉を定義しようと、国の研究機関と民間企業が共同で“ごはん用語辞書”作りに取り組んでいる。あいまいなまま使われている表現に基準を設けることで、生産者や流通現場が伝えたい「ごはんの個性」が正確に消費者に届くことが期待される。

ごはんの香りをかぐ農研機構食品研究部門の早川文代研究員=1月、茨城県つくば市
ごはんの香りをかぐ農研機構食品研究部門の早川文代研究員=1月、茨城県つくば市
過去に農研機構で行ったごはんの官能評価=茨城県つくば市(同機構提供)
過去に農研機構で行ったごはんの官能評価=茨城県つくば市(同機構提供)
「ごはん用語辞書」のイメージ
「ごはん用語辞書」のイメージ
ごはんの香りをかぐ農研機構食品研究部門の早川文代研究員=1月、茨城県つくば市
過去に農研機構で行ったごはんの官能評価=茨城県つくば市(同機構提供)
「ごはん用語辞書」のイメージ

 1月、茨城県つくば市の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)。食品研究部門の早川文代研究員らが炊きたてのごはんを前に白熱した議論を交わしていた。「“モソモソ”と“ポソポソ”は違う?」「“粒立ちが良い”と“粒感がある”は区別する?」。伊藤忠食糧(東京)と進める辞書作りの一幕だ。
 生産や流通、販売などの現場では、専門家らが鼻や舌で品質を判断する「官能評価」が行われ、結果は新品種の開発や仕入れに影響したり、商品の宣伝に生かされたりする。しかし、表現の認識が統一されていなかったり同じ言葉が多用されたりして、評価の精度が低くなる懸念があった。
 全国のコンビニなどに精米を販売する伊藤忠食糧の天野敏也米穀本部長は「“みずみずしい米”といっても“べちゃつく”と捉える人もいる」と例を挙げる。ただ、味や香りを全て数値化するのは「現実的ではない」。解決策を求め、2021年から農研機構と研究を始めた。
 まずは評価に熟練した研究者ら12人で32品種を食べ、見た目や味、香りの感想を出し合った。炊きたてだけでなく時間がたったもの、コンビニおにぎりや長期保存用のパックごはんなど試食は110種類以上に及んだ。
 ごはんに関する論文や炊飯器のカタログなど100以上の文献にも新たな表現を求め、集まった用語は7千以上。「納豆のような味」「ゆで卵のような香り」と独特の言い回しもあり、「言語化できず見過ごされてきた特徴も辞書に入れれば拾い上げられる」と早川さん。どんな工程でその風味が付くか検証もした。
 外観、味、香り、テクスチャー(食感)の4分類で約100語に絞り、今は定義付けの作業中だ。「つやがある」「甘い香り」といった定番ワードの説明には頭を悩ませるという。類義語や反対語を紹介し、「特定品種に多い特徴」「多くの粒を見て判断すること」など、評価の際に指針となるような補足も加える。
 24年度中の完成を目指し、将来的には農研機構のホームページで公表予定。早川さんは「評価の専門家だけでなく、消費者にとってもごはんの魅力を伝えるツールにしたい」と意気込んでいる。

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