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【岸田首相就任を祝う会】任意団体、新たな抜け道に 公開ルールなく「錬金術」

 岸田文雄首相の就任を祝う会を主催した任意団体による首相側への寄付を、立憲民主党が「巧妙な錬金術」などと批判している。情報公開のルールはなく、首相も主催者ではないとの理由から詳しい説明を避けており、祝う会の収支や寄付の経緯は明らかになっていない。政治資金の透明化に向けた議論が進む中、専門家は規制をかいくぐる新たな「抜け道」になると懸念を示す。

「内閣総理大臣就任を祝う会」を巡る岸田文雄首相、野党議員の発言
「内閣総理大臣就任を祝う会」を巡る岸田文雄首相、野党議員の発言

 ▽縛り
 「友達にパーティーを開いてもらって利ざやを政治家に寄付すれば、政治資金パーティーとしての縛りを受けなくて済む。丸もうけだ」
 6日の衆院予算委員会。立民の山岸一生衆院議員がこう見解をただすと、岸田首相は「任意団体において開催いただいた、純粋な祝賀会であると認識している」と従来の主張を繰り返した。収支の明細開示の要求には「主催側ではないため答える立場にない」とした。
 政治資金規正法は、政治資金パーティーの開催日や収支などを政治資金収支報告書に記載しなければならないと規定する。ただ、主体は原則「政治団体」。任意団体によるイベントは規正法の縛りを受けにくくなる。
 1万円の会費を集め、壇上で政治家らのあいさつが続いた「祝う会」。参加者は「通常の政治資金パーティーとの違いはなかった」と振り返る。政治資金に詳しい上脇博之神戸学院大教授は「任意団体の催しを装ったパーティーがまかり通れば、容易に裏金がつくれてしまう」と懸念する。
 ▽透明化
 似たような事例は過去にもあった。
 1998年、大阪市議の議長就任を祝うパーティーを主催した任意団体が、収益のうち約374万円を「祝儀」として議長に贈呈。一般に政治資金集めのパーティーで得られた資金のうち、政治活動に使った分以外は税務申告が必要になるが、議長は申告を怠り「政治資金集めが目的ではなかった」などと釈明した。
 首相就任を祝う会の発起人の1人も、集金目的ではなかったと強調する。寄付の経緯までは知らないとしつつ「余剰金を主催者側の誰かの懐に収めるのが一番まずい。寄付という形にして岸田氏側の収支報告書に載せれば問題ないという結論になったのだと思う」と話した。
 反論一色だった岸田首相も最近は「今後については考えたい」と反省の言葉を口にする。
 地方議員の経歴を持つ真鍋貞樹拓殖大教授(政治学)は「政治に関わる資金を動かすなら、政治団体による開催として届け出るべきだった」と指摘する。パーティーのように大規模でなくても、少数の支援者で会費制の会合を開き、余った金を政治家に渡すケースはままあると解説。その上で「政治資金の透明化が叫ばれる中、しっかりとした処理が求められていくだろう」と話した。

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