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【ダイハツ新体制】再生へ試されるトヨタ流 「現場に主権」険しい道

 トヨタ自動車が、認証不正問題を起こした子会社ダイハツ工業の新たな経営体制を発表した。トヨタから3人の幹部を送り込み、異常や不正があれば現場が自らの判断で立ち止まれる組織を目指す。豊田章男会長は「主権を現場に取り戻す」と繰り返してきた。トヨタ流の改革が試されている。

ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見する親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏(右端と画面)=13日午後、東京都中央区
ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見する親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏(右端と画面)=13日午後、東京都中央区
ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見に臨む親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏=13日午後、東京都中央区
ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見に臨む親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏=13日午後、東京都中央区
トヨタグループの主な不正
トヨタグループの主な不正
ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見する親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏(右端と画面)=13日午後、東京都中央区
ダイハツ工業の新社長就任が決まり、記者会見に臨む親会社トヨタ自動車出身の井上雅宏氏=13日午後、東京都中央区
トヨタグループの主な不正

 ▽本音
 「海外では自ら話しかけ、信頼を勝ち得ないと本音を聞かせてもらえない。ダイハツでも現場で徹底的に対話し、心を一つにしたい」。ダイハツの社長に就く井上雅宏氏は13日の記者会見で、トヨタ入社後の半分を新興国中心に海外で歩んできたと自己紹介した。
 不正の背景には「現場からものが言いにくい雰囲気」「身の丈を超えた負荷を現場に強いたこと」があったとされる。だからこそトヨタは人選で「現場に行って、知ろうとする努力をする人かどうか」(幹部)を重視。新興国事業を現場重視で前進させてきた井上氏に白羽の矢が立った。
 ▽リスペクト
 不正の原因についてはトヨタの不干渉も指摘されてきた。豊田氏は先月末、グループの経営トップらを前に「車造りがうまいダイハツを私がリスペクトしてしまった」と反省を述べた。
 かつてのトヨタは米国仕様の大型車でアジア市場を開拓しようとして苦戦した。「それを助けてくれたのが(小型車に強い)ダイハツだ。一緒にやってきたからこそ、トヨタは本当にグローバルになった」(豊田氏)。こうした思いも、厳しい目を向けられなかった理由だった。
 トヨタグループでは、日野自動車や豊田自動織機でも認証不正が起きている。トヨタ自身の反省と変革について、佐藤恒治社長は「現場に主権を戻し、現場経営を徹底する。ものが言いやすいグループの関係をつくっていく」と決意を示した。
 企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「トップ企業が持つ『暗黙の圧』をいかになくしていくか、ダイハツの中間管理職から優秀な人を抜てきしていかに現場からやる気を引き出すかが鍵だ」と指摘した。
 ▽期待
 ダイハツは9日、車両開発日程を従来の1・4倍に延ばす再発防止策を国土交通省に提出した。13日の会見を見守った国交省関係者は「誰がトップになっても実施状況をきちんとチェックしていくだけだ」と表情を崩さなかった。
 ダイハツに部品を供給する愛知県内のメーカーからは「新しい社長になって何が変わるか、前向きに捉えている」(幹部)と期待の声もあった。
 ダイハツのある従業員はこう訴えた。「人数を減らされても、トヨタの要求に一生懸命応えてきた。従業員が幸せにならないと、顧客も幸せにできない。現場の声を吸い上げられる経営陣が、もっと増えてほしい」

いい茶0

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