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借金だらけだった俳優・高橋英樹さんが40年以上初日に確定申告する理由 「毎年2月がお正月」コツは宿題と同じ、ため込まず日頃からやること

 2月16日から、2023年分の確定申告がスタートする。毎年申告が始まるこの時期になると、期限ぎりぎりまで膨大な事務作業や、経理書類の山と格闘する人も多いだろう。そんな中、俳優の高橋英樹さんが1979年から45年間、申告開始初日の朝に申告を済ませ続けているのはご存じだろうか。今年80歳を迎えた昭和のスターが、なぜ毎年自ら税務署に足を運ぶのか。「初日申告」へのこだわりと思いを聞いた。(共同通信=助川尭史)

インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
俳優の高橋英樹さん=1962年8月
俳優の高橋英樹さん=1962年8月
結婚式でケーキにナイフを入れる俳優の高橋英樹さんと妻の美恵子さん=1974年3月、東京
結婚式でケーキにナイフを入れる俳優の高橋英樹さんと妻の美恵子さん=1974年3月、東京
納税表彰式で財務大臣表彰を授与される高橋英樹さん(右)=2018年10月、東京都港区
納税表彰式で財務大臣表彰を授与される高橋英樹さん(右)=2018年10月、東京都港区
タブレット端末を使い、e―Taxでの申告を体験する俳優の高橋英樹さん(中央)=2023年2月、東京都港区の品川税務署
タブレット端末を使い、e―Taxでの申告を体験する俳優の高橋英樹さん(中央)=2023年2月、東京都港区の品川税務署
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
インタビューに応じる俳優の高橋英樹さん=2月2日、東京
俳優の高橋英樹さん=1962年8月
結婚式でケーキにナイフを入れる俳優の高橋英樹さんと妻の美恵子さん=1974年3月、東京
納税表彰式で財務大臣表彰を授与される高橋英樹さん(右)=2018年10月、東京都港区
タブレット端末を使い、e―Taxでの申告を体験する俳優の高橋英樹さん(中央)=2023年2月、東京都港区の品川税務署

 ―初日申告を始めたきっかけを教えてください。
 「最初は国税庁の方から初日に確定申告をしてくれないかとお話しがあったのがきっかけです。当時は私だけでなく、いろんな芸能人がPRの一環として初日に税務署に行って、取材を受けていました。私もそれまでは期限までに済ませれば良いという考えだったんですけど、一回やってみると、もうすっきり感がたまらないんです。その経験が忘れられずに、翌年から一度も欠かさず、初日に申告を続けています」
 ―豪快なイメージがある昭和のスターの方は、お金に無頓着なイメージがありました。
 「先輩たちはもうむちゃくちゃな人たちがいっぱいで、若い頃は税金の話なんてしている人は一人もいませんでしたね。私もご多分に漏れず、芸能界に入って映画に出ていた頃は銀座や赤坂に繰り出して、スタッフみんなにごちそうしたりしていました。いくら使ったなんて何も覚えていない。働いたお金は全部自分のお金だと思っていました」
 ―なぜ、税に関心を持つようになったのですか。
 「ずっとそういう生活を続けていたので、結婚する時には、借金しかなかったんです。見かねたうちの奥さんが経理をしてくれることになり『稼いだもの全てがあなたのものではない』と諭されました。貧しくて食べるものも着るものもなかった日本の発展の基礎になったのが、みんなが働いて納めた税金なのだと。それがきっかけで税に関心を持つようになり、夫婦で税務署に行くのが恒例行事になりました」
 ―当時は会計ソフトもない時代。すごく大変な作業だったのではないでしょうか。
 「日々使ったものをメモして、月ごとにこまめに経理書類をまとめる作業をずっと続けています。だいたい毎年ノート数冊分になりますね。初日申告に間に合わせるには、1年分の書類を全部集めて、正月休み返上で帳簿付けをしないといけない。うちでは2月をお正月と呼んでいるんです。申告を済ませて夫婦でちょっと乾杯して、初めて新しい1年が始まる感じがします。今は(インターネットで納税手続きする)e-Taxができて楽になりましたけど、申告までの集計作業は以前と変わらず夫婦2人ねじり鉢巻きでやっています」
 ―毎年品川税務署で報道陣の取材に応じる姿は、今や確定申告初日の風物詩になっています。
 「私の顔を見て、慌てて申告をやりだしたという人の話も聞きます。撮影の現場でも『高橋さんは40年初日申告を続けているんですね。私も行きます』と声をかけてくださる方が結構いらっしゃるんです。そういう意味では少しでもお力になれているのかなというふうに思いますね」
 ―2018年には確定申告書の早期提出のPRに長年協力してきた功績を受け、財務大臣表彰が贈られました。
 「長年続けてきた演技の仕事では表彰をもらったことがないのに、こんな賞をもらっていいのかと思いましたけどね。初めて、納税をしっかりやり遂げてきてよかったなと実感しました。健康で働けないとできないことなので。毎年確定申告初日の午前中には税務署にいるという、緊張感を持てたのがここまで続けられた理由かもしれません。不思議とこの時期は風邪をひかないんですよ」
 ―2023年は今年の漢字に「税」が選ばれました。インボイス制度の開始や、自民党の裏金問題など、税への関心が高まる昨今の状況をどう考えますか。
 「税を納めることは当たり前ですが、どういう使い方をしているのかは一番気になるところです。納税者として、今年1月の能登半島地震のような災害では大いに活用してほしいと思う一方、無駄な税金の使い方をしているのを見ると、ちょっとひんしゅくものですね。国民が豊かになるようにどう使うかが一番大事だと思います。社会のどこかに役に立っていると思えるからこそ、われわれは納税する。これがなかったら、国が成立しませんから。使い道を決める政治家には、税が社会の根幹の部分を担っているという思いをちゃんと持ってほしいと思っています」
 ―高橋さん自身は今年80歳を迎えました。今後も初日の納税は続けていきますか。
 「さすがにもう年齢も年齢ですし、正直しんどい思いもあります。でもこの歳になるまで現役で働いて、申告できることのありがたみを感じ、健康でいてよかった、頑張ってきたかいがあったなと思います。仕事をいただけたら一生懸命頑張って、そしてまた来年の初日には申告する流れがこれからも続いていったらいいと思っています」
 ―毎年どうしても期限ぎりぎりの申告になってしまう人も多いと思います。改めて初日申告を続けるコツと良さを教えてください。
 「コツは、宿題と一緒でためずに、日頃からやることがおすすめです。皆さんもそうだと思いますが、2月から始めると作業が大変で、年度末で他の仕事が忙しくなったりするんですよ。だからなるべく普段から隙を見てやっていくということが大事だというふうに思います」
 「納税というのは国民の義務ですから。しっかり申告して納税することは社会の一員として存在感を高められる行為だと思います。そしてこれを初日にすると気持ちよさが半端ない。ぜひこの爽快感を一度味わってほしいですね」

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