テーマ : 読み応えあり

【男性の育休取得】大企業で浸透、定着正念場 女性就業支援、充実図る

 男性の育児休業は大企業を中心に浸透しつつあり、定着に向けて一段と歩みを進める正念場を迎えている。男性が家事や育児に積極的に関われば、負担が偏りがちな女性の支えになる。女性は育休期間が相対的に長く、キャリアの足かせとならないよう企業側も支援を充実させているが、男性の長時間労働を見直し、女性の管理職を増やす改革も求められている。

女性の育休が長期化することに伴う課題と対策
女性の育休が長期化することに伴う課題と対策

 ▽取得率100%も
 東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険では、2022年度の男性社員の育休取得率は100%だった。ただし平均取得期間は5日未満で、妻のサポートが十分できる期間にはほど遠い。同社は「全ての社員が必要とする日数を取得できるよう取り組む」と説明。23年度は5日以上取得する人数は増えているという。
 JR東日本は3カ月以上6カ月未満で、比較的長かった。取得率は43・7%。多くの職場にダイバーシティー(多様性)を推進する委員会があり、自主的な勉強会を開くなど取り組んできた。
 大妻女子大の田中俊之准教授(男性学)は「男性育休は取得に向けた機運を高める時期から定着の段階に入っており、長期間取れた実績は評価に値する」とした上で、出産による女性の心身へのダメージを考慮すると、男性の育休は2カ月は必要だと指摘する。
 育休期間の過ごし方も重要だ。家事を担わず、かえって女性の負担となる「取るだけ育休」も問題となっている。日本航空は家事経験が少ない社員でも取り組みやすいように、効率的な家事のノウハウを学べるセミナーを開催している。
 ▽性別役割分担
 女性の取得期間は男性よりも長期に及ぶ。企業に課題や問題点を尋ねると「復職時の不安感」(旭化成)や「家庭内の役割分担が女性に偏ってしまい復職後に影響」(日産自動車)といった声が出た。長期間の育休で女性が主に家事育児を担うという性別役割分担意識を強め、新しい仕事や昇格への意欲の妨げになっているとの懸念だ。
 日本の企業は経営に携わる役員に占める女性の割合が低く、まずは管理職層を厚くする必要がある。子育て中の女性幹部育成の取り組みも広がっており、ANAホールディングスは産休や育休が管理職に挑戦する際のマイナスとならないよう、評価制度を見直した。
 ジャーナリストの治部れんげさんは「女性が働きやすくなるには、男性の長時間労働を見直す必要がある」と訴える。「男性が家庭で責任を果たせるようになれば、労働市場全体が良くなっていく」と強調した。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞