テーマ : 読み応えあり

ガーナで薬、空から配送 感染症対策ドローン活用 日本の離島も、採算性課題

 遠く離れたアフリカのガーナで、日本企業がドローンを使って緊急の薬や血液製剤を運んだり、マラリアを媒介する蚊を減らしたりする取り組みを進めている。こうした実績を日本の過疎地の住環境改善にも役立てようと、長崎県の離島で薬や日用品を配送する事業が始まっているが、採算性に課題がある。

薬を搭載して基地から飛び立つ飛行機型ドローン=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
薬を搭載して基地から飛び立つ飛行機型ドローン=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
蚊の発生源となる水たまりを見つけるドローンを操縦するソラテクノロジー社の梅田昌季取締役(左端)=1月29日、ガーナ・アクラ近郊(共同)
蚊の発生源となる水たまりを見つけるドローンを操縦するソラテクノロジー社の梅田昌季取締役(左端)=1月29日、ガーナ・アクラ近郊(共同)
配送を終えたドローンを回収する担当者=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
配送を終えたドローンを回収する担当者=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
ガーナ・スフム
ガーナ・スフム
薬を搭載して基地から飛び立つ飛行機型ドローン=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
蚊の発生源となる水たまりを見つけるドローンを操縦するソラテクノロジー社の梅田昌季取締役(左端)=1月29日、ガーナ・アクラ近郊(共同)
配送を終えたドローンを回収する担当者=1月31日、ガーナ・スフム(共同)
ガーナ・スフム

 「ゴゴゴ」―。1月31日、ガーナ東部のスフムの基地から赤い翼の白いドローンが飛び立った。胴体2メートル、両翼の長さ3・3メートルの飛行機型。時速100キロで最大80キロ離れた場所まで薬や血液製剤、ワクチンを運ぶ。事前に設定した目的地上空でパラシュートを付けた荷物を落とすと、自動で基地に戻った。
 ガーナでのドローン配送は、米企業ジップラインとともに豊田通商が実証事業を行ってきた。ガーナは日本の約3分の2の大きさだが、舗装されていない道が多く、陸路での輸送は困難を伴う。医療アクセス向上のためドローンに白羽の矢が立った。
 国内6拠点から約2300施設の医療機関に配送。迅速かつ効率的に届けることで、2019年から22年までにワクチンの在庫切れによる接種を逃す機会42%減、医薬品の在庫切れ日数21%減、血液製剤の期限切れの廃棄67%減となった。
 「ガーナではヘビ毒の薬の配送など、緊急で対応しないといけない機会が頻繁にあり、ドローンが活躍している」とジップラインのエリア担当エバ・ハックマンさんは話す。搬送が間に合わない距離でも輸血が必要な妊産婦に血液製剤を届けることができ、母子ともに助かったケースもあったという。事業はワクチン普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」が資金援助する。
 感染症対策でもドローンを用いた試みが進行中だ。ベンチャー企業ソラテクノロジー社(名古屋市)は、人工知能(AI)を活用し、ドローンで上空からマラリアを媒介する蚊の発生源となる水たまりを見つける技術を開発した。殺虫剤をピンポイントに散布して、環境負荷や人件費、薬剤費を減らすのが狙い。
 マラリアは世界で年間数十万人の命を奪っている深刻な感染症。シエラレオネでもデータ収集を本格化させる。梅田昌季取締役(26)は「現地での雇用を増やして他国にも広げていきたい」と意気込む。
 豊田通商は長崎県の五島列島でも、22年から薬と日用品を配送する取り組みを始めた。利用料は1回500~千円程度で昨年の飛行回数は979回。事業拡大の目的で行政の補助を受けるが、他の収入と合わせても運営は厳しく、社会実装には採算性が大きな壁となりそうだ。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞