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【上場企業決算】値上げ支えに春闘前向き 人手不足や地震懸念も

 上場企業の2023年4~12月期決算は、半導体不足の緩和や円安基調を追い風に好調だった。製品を値上げし消費者の財布にも支えられた。日経平均株価はバブル経済期以来、約34年ぶりの高値を付け勢いを保つ。経営者からは今春闘での賃上げに前向きな声が相次ぐが、中国経済や人手不足、能登半島地震の影響が懸念材料として浮上している。

経営者の主な発言
経営者の主な発言

 ▽重要局面
 純利益が4~12月期として過去最高だったスズキ。長尾正彦取締役専務役員は、半導体不足の解消を理由に挙げた。半導体は人工知能(AI)向け需要が増加傾向にある。半導体のシリコンなどを手がける信越化学工業の斉藤恭彦社長は、低迷していた市場の「復調は間近だ」と期待する。
 「価格転嫁の強化により収益改善が継続した」。ユニ・チャームの高原豪久社長は生理用品などの値上げが、過去最高の売上高と純利益につながったと説明した。業績を押し上げた要素に「円安の継続」(三菱重工業の小沢寿人最高財務責任者=CFO)を指摘する企業もなお多い。新型コロナウイルス禍から人出も回復。パナソニックホールディングスの梅田博和CFOは「旅行需要の再開でデジタルカメラ関係が好調だ」と話した。
 企業が拡大した利益を賃上げに回して消費を活発にし、日本経済を持続的に成長させられるかどうか重要な局面にある。現時点では「平均で5%程度は賃上げしないといけない」(京セラの谷本秀夫社長)といった前向きな姿勢が目立ち、上場企業の賃上げ機運は高まっている。
 ▽需要取りこぼし
 中国が8日発表した1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0・8%下落した。マイナスは4カ月連続で、下落率は14年4カ月ぶりの大きさだった。日本が長くはまり込んだ、物価が下がり続けるデフレへの警戒が中国経済に高まる。
 オムロンは制御機器事業などで中国需要が振るわず24年3月期の連結業績予想を下方修正した。辻永順太社長は「中国の成長に依存していたがエリア軸を見直す」と戦略を練り直す考えだ。カシオ計算機も「中国市場の落ち込みは他の地域でカバーする」(高野晋CFO)という。
 能登半島地震で通信設備が損傷したKDDIの高橋誠社長は被害額を数十億円規模と想定する。移動式設備などを使って通信エリアの多くで応急復旧を完了させたが、全壊した基地局の再建など「本格復旧にはもう少し時間がかかる」と話す。
 建設やサービスなど幅広い業種で人手不足が常態化。需要を取りこぼすような事態も出てきている。JFEホールディングスの寺畑雅史副社長は「土木業界の人手不足で、鋼材需要の先送りが続いている」と指摘した。

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