テーマ : 読み応えあり

【自民派閥裏金事件】政治改革、首相正念場 鍵は「世論の納得感」

 自民党が派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、政治改革の具体化へ動き出した。国会論戦では曖昧な答弁に終始した岸田文雄首相。作業部会での議論を通じ、政治資金の透明化といった課題の克服へどこまで踏み込めるのか、正念場を迎える。内閣支持率が最低水準の20%台に沈む中、「世論の納得感」を得られる結論を導き出せるかどうかが、改革の成否の鍵を握る。

自民党改革の方向性
自民党改革の方向性

 ▽隔たり
 「党を前に進めるやりがいのある仕事だ。頑張ってほしい」
 8日、党本部。首相は昼食を共にした中堅・若手にハッパをかけた。メンバーは、政治刷新本部がまとめた中間報告に沿って制度設計する三つの作業部会の担当者。来週、検討が本格化する。
 野党が関心を寄せるのが、政治資金に関する法整備を検討する部会だ。首相は政治資金規正法改正について「今国会で実現する」とたんかを切った。だが中間報告に記された「政治資金の透明化、厳格な責任体制の確立」以上の具体論はない。
 監査の強化やデジタル化といった透明化の面では野党と方向性が一致する半面、政治資金パーティーの扱いは隔たりが大きい。立憲民主党は全面禁止、日本維新の会や共産党は企業・団体による購入禁止を掲げるが、自民中堅は「野党の土俵で議論することはない」と予防線を張る。
 ▽慎重
 もう一つの焦点が政治家への罰則強化だ。自民は中間報告で「会計責任者が逮捕、起訴になった場合、議員も処分できる党則改正を行う」との表現にとどめた。3月17日の党大会での承認を目指し、作業部会で詰める。
 連立を組む公明党は、党則改正では不十分との立場。規正法を改正し、公選法に規定されているような連座制を導入することで、議員が連帯責任を負うようにすべきだと提案する。今月の共同通信世論調査では「導入するべきだ」は76・5%に上った。
 ただ自民の茂木敏充幹事長は「公選法の概念をそのまま適用するのがいいのか、議論の余地がある」と慎重に言葉を選ぶ。国対筋も「ポピュリズムに走らない方がいい。重過失に絞るなど要件を厳格にするべきだ」とくぎを刺す。
 ▽難航
 作業部会では、「派閥政治の典型」(ベテラン)と言われる人事を、党に一元化する方策も論議する。岸田内閣では昨年9月の副大臣・政務官人事で、派閥のバランスを考慮した末に女性登用がゼロとなり、野党だけでなく与党からも批判が上がった。
 派閥の推薦禁止の代わりに浮上するのが「人材バンク構想」(若手)だ。議員の経歴を党がデータベースで管理する。幹事長や政調会長ら党幹部が選任権限を握るものの、人事の調整弁でもあった派閥が関与しないガバナンス(組織統治)は難航が予想される。
 首相周辺は「自民党政治の根底を覆すことになる。すぐに結論は出ないだろう」と語った。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞