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トイレ管理責任者の設置を 能登半島地震で専門家【生活ワイド】

 能登半島地震の被災地では災害用トイレの設置が進む一方、排せつ環境が整っていない地域も多い。専門家は「トイレは単なる設備の問題ではない。災害関連死を防ぎ、被災者の尊厳と公衆衛生を保つため、緊急に解決すべきだ」と訴える。

石川県輪島市立鳳至小の避難所に設置された仮設トイレ
石川県輪島市立鳳至小の避難所に設置された仮設トイレ
「被災者が日常を取り戻す、その一歩目がトイレなのです」と語る加藤篤さん
「被災者が日常を取り戻す、その一歩目がトイレなのです」と語る加藤篤さん
石川県輪島市立鳳至小の避難所に設置された仮設トイレ
「被災者が日常を取り戻す、その一歩目がトイレなのです」と語る加藤篤さん

 災害時のトイレ事情に詳しいNPO法人「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さんは、トイレが不衛生だったり使い勝手が悪かったりすると、(1)ノロウイルスなど集団感染の恐れがある(2)排せつを我慢するために水分や食事を制限し、エコノミークラス症候群などによる災害関連死のリスクがある(3)「一人になれる場」がなくなり、心理的影響が出る―といった問題が起こると懸念する。
 自律神経が大きく関わる排せつには安心できる環境が不可欠。加藤さんが最重要視するのはトイレの設置だけでなく、維持管理し、排せつ物を衛生的に処理するまでを「トータルで管理する責任者」の存在だ。「使用実態を確認し、問題があれば改善する。今は日常に近い環境を整えることに注力してほしい」
 内閣府のガイドラインによると、トイレの平均的な使用回数は1日5回。復旧するまでは携帯トイレや仮設トイレなどさまざまな災害用トイレを組み合わせて対応するが、加藤さんが1月初旬に被災地を訪ねた際は和式便器の仮設トイレをかなり見かけたそうだ。
 和式便器もアタッチメント式の洋式便座を取り付ければ座って使用できるが、「あくまでも応急措置」と強調する。足腰の弱い高齢者や子どもたちの多くが和式便器を使えないため「洋式便器は必須」だという。
 災害用トイレで大事なのは、快適に使い続けられる環境整備。夜間用照明のほか、便座を清潔に保つ除菌シートや掃除道具、消臭剤、トイレットペーパーをセットで備えると効果的と指摘する。
 厳しい寒さの中で屋外トイレに行くのは容易ではない。水の確保が難しければ、携帯トイレを建物内の便器に取り付けるなど、「できるだけ屋内トイレを使う工夫をしてほしい」と話す。
 避難所では、周囲に声をかけて一緒にトイレに行くことも有効だ。気分転換や運動になるほか、防犯対策にもなる。また、排せつの困り事は口にしづらい人も多いので、医療や福祉関係者など専門職を聴き手に置くことで話しやすくなり、問題把握につながるという。

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