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【性別変更家裁決定】「大きな一歩」残る課題 法改正進まず、なお手術も

 岡山家裁津山支部は7日、生殖能力をなくす手術を受けていない臼井崇来人さん(50)の女性から男性への性別変更を認めた。昨年10月の最高裁の違憲決定に沿ったもので、臼井さんは「大きな一歩」と評価した。ただ、男性から女性への場合はなおも手術が必要なケースがあるほか、性同一性障害特例法の改正に向けた動きも進んでいない。課題は残る。

岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん(手前右)。同左は大山知康弁護士=7日午後、岡山市
岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん(手前右)。同左は大山知康弁護士=7日午後、岡山市
岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん。右は大山知康弁護士=7日午後、岡山市
岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん。右は大山知康弁護士=7日午後、岡山市
岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん(手前右)。同左は大山知康弁護士=7日午後、岡山市
岡山家裁津山支部の決定を受け、記者会見する臼井崇来人さん。右は大山知康弁護士=7日午後、岡山市

 ▽差別的
 「思いが通じた。訴え続けてきたことが正しいと判断された」
 岡山市内で記者会見した臼井さんは感慨深げに話した。一方で、同席した大山知康弁護士は戸籍上の性別で手術の必要性が異なっている点を挙げ「差別的な状況を解消すべきだ」と訴えた。
 特例法は性別変更に際し、五つの要件を規定。このうち「生殖能力がない」(生殖能力要件)と「変更後の性器部分に似た外観を持つ」(外観要件)の二つは手術要件と呼ばれる。卵巣や精巣の摘出、陰茎の切除などが必要となるためだ。
 昨年10月の最高裁決定は生殖能力要件を違憲としたが、外観要件については判断を保留し、高裁段階に審理を差し戻した。臼井さんのように女性から男性の場合はホルモン投与で外観要件を満たすとされるが、男性から女性の際は引き続き手術が避けられない見通しだ。
 ▽多様な権利
 津山支部の決定を受け、当事者団体「gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会」の永沼利一代表理事(38)は「当事者にとって違憲決定は希望であり、それが(家裁で)現実に認められた」と評価した。
 GID(性同一性障害)学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授も「金銭面や病気などにより手術ができない人もいる。多様な権利を保障する重要な決定だ」と意義を強調する。一方で、体への違和感などからあえて手術を望む人も少なくないと指摘。「より多くの診療拠点の整備などさまざまな面でのケアが必要だ」と訴える。
 ▽不作為
 「由々しき事態だ。国民の間で不安を感じる人が出てくる」。自民党の保守系議員は津山支部の決定に顔をしかめた。
 自民では、昨年10月の違憲決定直後は特例法改正に前向きな発言が続いた。だが保守系の「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」が警戒を強めた。高裁段階へ差し戻された外観要件の判断が出るまで、法改正を急ぐべきではないとブレーキを踏んだ。
 とはいえ相次ぐ司法判断を放置すれば、立法府の不作為が問われるのは間違いない。林芳正官房長官は7日の記者会見で「立法府と十分に連携して適切に対応する」と説明した。自民幹部は保守派の反発を念頭にぼやく。「党内調整は一筋縄ではいかない」

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