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【被災地の教員支援】学校再開も、疲労ピーク 欠かせない精神的ケア

 能登半島地震で被災した石川県の全小中学校で、登校が可能になった。発生当初から学校に設けられた避難所の運営に携わりながら、授業再開に向け奔走してきた教員の疲労はピークに。専門家は「子どもたちと同様に精神的ケアが不可欠だ」と指摘する。文部科学省や県は、教員を派遣するなど負担軽減を急ぐ。

社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日
社会科の授業をする石川県能登町立松波中の田中慎之介教諭=1日

 ▽山積み
 能登半島北東部の石川県能登町。町立松波中で1日午前、田中慎之介教諭(38)が2年生3人にテストを返却し、解説する授業をしていた。自宅が半壊し、地震翌日以降は、妻子と身を寄せる親戚宅から学校に通勤。避難所となっている体育館で高齢者らの手助けをするとともに、校内の片付けなど授業再開の準備を進めてきた。「眠れない日が続いている」と打ち明ける。
 任意登校の期間を経て1月22日から3学期が開始。全校生徒41人のうち、金沢市内に集団避難した一部生徒らを除く25人が始業式に参加した。田中教諭は、久々の再会にうれしさを感じながらも「心のケアや、学習の遅れをどう取り戻すかなど課題が山積みだ」と話した。
 ▽支援
 文科省や県教育委員会によると、残っていた輪島市内の小中7校が2月6日、県立輪島高の校舎を利用して児童生徒の受け入れを始め、県内の全小中学校で登校が可能になった。特に被害が大きかった奥能登の輪島市、珠洲市、能登町では、希望した中学生計350人以上が一時的に親元を離れ、金沢、白山両市に集団避難して現地で授業を受けている。
 集団避難に同行している教員は、日中の授業だけでなく、生徒の夜間の生活などにも目を配る必要がある。学校では残った教員が業務をカバーしており、双方とも負担は増している。
 文科省は被災地の教員を支援するため、全国の教育委員会の協力を得て、集団避難先の施設に約40人の教員らを配置。輪島市や珠洲市の学校にはスクールカウンセラー15人を派遣した。幹部は「子どもだけでなく教員も、悩みを抱え込まず相談してほしい」と話す。
 県教委も5日から、集団避難などで教員が不足する奥能登の小中16校に、県内から日帰りで教員を派遣し始めた。
 奈良学園大の松井典夫教授(学校危機マネジメント)によると、2016年の熊本地震では発生から数年後に、教員が抑うつ症状などに悩むケースがあったという。落ち着いたころに我慢していた感情が噴き出すことがあると説明し「国や自治体は、スクールカウンセラーの配置を充実させ、中長期的に精神面のケアを続ける必要がある」とした。

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