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【能登半島地震の災害廃棄物】復興加速へ作業効率化 輸送ルート、再利用課題

 能登半島地震で推計される災害廃棄物244万トンは、近年では熊本地震(約311万トン)に次ぐ量となる。国や石川県は復旧・復興の加速に向け処理作業を効率化する方針で、県外での広域対応を含め約2年での完了を目指す。道路網寸断で搬出が滞る恐れがあるため海上輸送を検討しているが、港の被災がネックとなる。がれき再利用で運び出す量を減らすことも課題だ。

石川県珠洲市の仮置き場に運び込まれた災害ごみ=6日午前
石川県珠洲市の仮置き場に運び込まれた災害ごみ=6日午前
近年の地震で生じた災害廃棄物
近年の地震で生じた災害廃棄物
石川県珠洲市の仮置き場に運び込まれた災害ごみ=6日午前
近年の地震で生じた災害廃棄物

 ▽地域特性
 「1カ月たっても街の景色は全く変わっていない」。石川県珠洲市の福田収さん(72)は6日、壊れた自宅の瓦や壁を仮置き場に運び込み、力なく話した。街には倒壊した住宅や崩れた塀が道路に広がったまま。「一人の力には限界がある。ボランティアや自治体の支援が増えない限り、本格的な片付けはまだ先だ」とため息をついた。
 能登町の担当職員は県の推計に「(町の試算より)かなり大きい」と驚く。現場の人手が足りず「全国各地から職員の中長期的な派遣が必要になる」と指摘した。
 環境省幹部は、石川県分だけで244万トンに上った背景として、同じ敷地に納屋や倉庫、蔵など複数の建物を抱える住宅が多いという地域の特性を指摘。被災家屋の解体は「3月にも本格化する」とみており、仮置き場の確保や輸送体制の確立を急ぐ。
 ▽県外で焼却
 過去の大地震でも、被災地の処理能力を上回る大量の廃棄物が発生し、自治体の枠を超えた広域処理が進められた。環境省などによると、1995年の阪神大震災で生じた約1500万トンは、可燃物の約14%を兵庫県外で焼却するなどして約3年で処理を完了。東日本大震災では岩手、宮城両県の木くずや不燃物の一部を県外で処理した。
 能登半島の場合、険しい地形で「仮置き場や中間処理施設の用地が確保できない」(環境省幹部)ため、他の地域への運搬を想定している。しかし幹線道路は本格復旧まで数年かかるとの見方もあり、環境、国土交通両省は連携し、港からの海上輸送を検討。被災した港は応急復旧で「不十分とはいえ、使える状態」(国交省幹部)にあるが、大量の廃棄物を円滑に運び出すには不安が残る。
 海上輸送は熊本地震でも実施された。木くずをコンテナ船などで三重県に運んで処理。陸上で運んだ分を含め、最終的に熊本県外で処理した廃棄物は約50・3万トンで全体の約16%に上った。
 ▽ノウハウ
 政府は地域外への輸送量を削減するため、現地でのリサイクルも進める方針だ。
 東日本大震災で発生した廃棄物は、建物のがれきなど約2千万トンと、津波で運ばれた土砂などの堆積物約1100万トン。コンクリート片や堆積土を復旧工事で舗装道路の下地などに使い、がれきは8割、津波堆積物はほぼ全量を再利用した。
 国交省によると、仙台市の海岸堤防復旧で廃棄物を再利用し、大型トラック約5万台分の輸送量を節減、被災地の渋滞を緩和できたという。環境省の担当者は「建材や木くずはバイオマス燃料にすれば処理量や経費の圧縮にもなる」と話す。
 宮城県の村井嘉浩知事は6日の記者会見で、東日本大震災後に分別を徹底した同県東松島市の例がモデルになると説明。能登地震の被災地に職員を派遣し「ノウハウを提供したい」と表明した。

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