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【バイデン氏初戦勝利】原動力の黒人層熱気なく トランプ氏と再対決に不安

 米大統領選の民主党候補指名争い初戦でバイデン大統領(81)が圧勝した。11月の本選に向けて順調な滑り出しに映るが、高齢への懸念や長引く物価高に対する不満から、4年前に政権奪還の原動力となった黒人層から熱気は感じられない。共和党の指名獲得が有力視されるトランプ前大統領(77)との再対決へ不安を抱えた船出となった。

有権者に投票を呼びかける米民主党全国委員会のハリソン委員長=3日、米南部サウスカロライナ州コロンビア(AP=共同)
有権者に投票を呼びかける米民主党全国委員会のハリソン委員長=3日、米南部サウスカロライナ州コロンビア(AP=共同)
米南部サウスカロライナ州サンティーの民主党予備選の投票所=3日(共同)
米南部サウスカロライナ州サンティーの民主党予備選の投票所=3日(共同)
3日、バイデン米大統領の予備選勝利を喜ぶ民主党支持者=南部サウスカロライナ州ノースチャールストン(共同)
3日、バイデン米大統領の予備選勝利を喜ぶ民主党支持者=南部サウスカロライナ州ノースチャールストン(共同)
バイデン米政権に幻滅したと語るブラウンさん=2日、南部サウスカロライナ州チャールストン(共同)
バイデン米政権に幻滅したと語るブラウンさん=2日、南部サウスカロライナ州チャールストン(共同)
有権者に投票を呼びかける米民主党全国委員会のハリソン委員長=3日、米南部サウスカロライナ州コロンビア(AP=共同)
米南部サウスカロライナ州サンティーの民主党予備選の投票所=3日(共同)
3日、バイデン米大統領の予備選勝利を喜ぶ民主党支持者=南部サウスカロライナ州ノースチャールストン(共同)
バイデン米政権に幻滅したと語るブラウンさん=2日、南部サウスカロライナ州チャールストン(共同)

 ▽恩義
 「2020年に続き今年もやった。全部勝つぞ」。3日、サウスカロライナ州予備選を制したバイデン氏はX(旧ツイッター)に投稿した動画で、ガッツポーズをして笑顔を見せた。
 バイデン氏は今回、民主党内の一部の反対を押し切り、長年の慣例を覆してまで初戦の地をサウスカロライナに変更させた。前回の20年大統領選の指名争い序盤で低迷した後、同州の黒人の支持を受けて息を吹き返した恩義があるからだ。
 黒人からの支持の厚さを再び見せつければ、ラストベルト(さびた工業地帯)を中心とした白人労働者層を重視するトランプ氏との違いもアピールできる―。3日発表した声明で「トランプの過激で危険な主張は米国を分断させる。そうはさせない」と訴えた。
 ▽幻滅
 だが、前回勝利の源泉となった黒人有権者の見方はこの4年で変化し、温度差もにじむ。
 サウスカロライナ州サンティーは黒人が住民の大半を占める。前回予備選の際には大通りで、バイデン氏支持を訴える市民の姿があったが、3日は閑散としていた。
 高校教師ジェリル・ギルモアさん(63)は今回もバイデン氏に投票したが、物価高や南部国境から流入する不法移民問題を念頭に「全て評価するわけではない」と語る。
 若者の離反も顕著だ。「高齢すぎる。世代交代が必要だ」。前回バイデン氏に投票したリサイクル店員エリック・ボイドさん(31)は今回、民主党予備選には参加せず、24日の共和党予備選でヘイリー元国連大使(52)に入れると決めた。
 無党派の無職ルーズベルト・ブラウンさん(63)も「黒人寄りと言うが、生活は全く良くならない」と幻滅を隠さない。
 ▽選択
 バイデン氏の心身の衰えを懸念する声も強く、政権の支持率は低迷が続く。AP通信の世論調査によると、黒人の間での支持率も21年7月は86%だったが、昨年12月は50%に沈んだ。
 それでも民主党は8月の党大会でのバイデン氏候補指名に突き進む。党内で台頭するリベラル色の濃いプログレッシブ(進歩派)を抑え込みつつ、本選で鍵を握る穏健派や無党派層を取り込める候補を他に見いだせないからだ。
 バイデン氏にも幅広い支持層の受け皿となってトランプ氏に勝てるのは自分だけだという自負があり、後進の育成に取り組む姿勢は見せなかった。政権を奪われればそしりは免れない。
 高齢者同士の再対決を国民の多くは望んでいない。主婦イレーン・ホートンさん(65)は「独裁者」になるとうそぶくトランプ氏の返り咲きを阻止するためバイデン氏に票を投じた後、こう語った。「私たちには他に残された選択肢がないの」(サンティー共同=高木良平)

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