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【災害備蓄と女性の視点】安心への配慮なおざり 「緊急対応は男性」転換を

 大規模災害の避難所で、女性や妊産婦、乳幼児らが安心して過ごせるようにするための配慮がなおざりになっている。内閣府の調査では、全国の自治体で必要な備蓄が不足し、そもそも防災部署に女性職員がほとんどいない実態が明らかに。専門家は「緊急対応は男性の仕事」という認識を根本から変え、ニーズを丁寧にくみ取るべきだと指摘する。

石川県珠洲市に届いた支援物資の仕分け作業。乳幼児のためのおむつやミルクなども配られた=4日午後
石川県珠洲市に届いた支援物資の仕分け作業。乳幼児のためのおむつやミルクなども配られた=4日午後
避難所での安心、安全を確保するため、運営上の留意点を列挙した内閣府のチェックシート=4日午後
避難所での安心、安全を確保するため、運営上の留意点を列挙した内閣府のチェックシート=4日午後
石川県輪島市の避難所に置かれた生理用品や女性用の肌着などの支援物資。目隠しが設置されるなどの配慮がされていた=4日午後
石川県輪島市の避難所に置かれた生理用品や女性用の肌着などの支援物資。目隠しが設置されるなどの配慮がされていた=4日午後
石川県珠洲市に届いた支援物資の仕分け作業。乳幼児のためのおむつやミルクなども配られた=4日午後
避難所での安心、安全を確保するため、運営上の留意点を列挙した内閣府のチェックシート=4日午後
石川県輪島市の避難所に置かれた生理用品や女性用の肌着などの支援物資。目隠しが設置されるなどの配慮がされていた=4日午後

 ▽要望
 能登半島地震の避難所となった石川県珠洲市の宝立小中学校では発災当初、女性用の肌着や生理用品が他の物資と同じように並べられていた。現在は別の部屋に保管しているが、女性スタッフから「店舗や家でも人目につかないようにしているものを、誰でも手に取れる場所に置くのはどうなのか」との意見が出るまで見落とされていた。
 別の避難所にいた女性(42)は下着の備蓄がなかったため、しばらく紙パンツを着用していた。「せめて布製のものを」と頼んだが聞き入れられず、道路の開通に合わせて他の避難所に移ったという。「避難所には女性スタッフも多いが、トップはやはり男性。要望を伝えてもなかなか実現しない」と漏らした。
 ある避難所では、女性の利用者が更衣室を設けてほしいと訴えた。しかし運営責任者の男性は「段ボールの仕切りがあるので、しゃがめば着替えはできる」と答えたという。
 ▽欠落
 東日本大震災では、女性が避難中に暴力や、性被害を受けたとの報告があった。
 内閣府は避難所での安心、安全を確保するため、2020年に運営上の留意点を列挙したチェックシートを作成。授乳室のほかに「生理用品や下着を配布する女性専用スペースを設ける」「仮設トイレは女性用を多めに」などを盛り込んだ。
 また管理責任者には男女両方を配置し、食事の用意や清掃などの負担が偏らないようにしたり、子育て・介護中の家庭の困り事や要望を積極的に聞き取ったりする必要があるとしている。
 しかし自治体側の動きは鈍い。
 22年12月末時点で、避難計画などを策定する防災・危機管理部局に女性職員が一人もいない市区町村は61・1%。都道府県レベルでも防災部署にいる女性職員の割合は全国平均で11・1%にとどまる。「女性の視点」の欠落は、細かなニーズの把握や必要な物資の備蓄の遅れにつながる。
 ▽連携
 内閣府は女性が少ない理由として「災害関連業務は緊急対応が必要になることが多く、女性より男性の配属が優先される領域と考えられている」と分析する。
 災害時のジェンダー問題に詳しい「減災と男女共同参画研修推進センター」共同代表の浅野幸子さんは「自治体の防災部署の職員数自体が少なく、女性の配置が難しい場合もあるが、福祉や子育て担当部署と協力し合えば女性や多様な視点を取り入れることはできる」と指摘。
 財政力が弱く、職員配置や備蓄が難しい小規模自治体に対しては、都道府県の備蓄を預かってもらったり、都道府県が積極的にアドバイスをしたりして、連携することが不可欠だとしている。

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