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【能登半島地震】断水長期化、耐震化遅れ 過疎地域、費用負担重く

 能登半島地震では、石川県の輪島、珠洲両市などで断水が長期化している。道路と配水管が広範囲に損傷したためで、同県は基幹的な水道管の「耐震適合率」も全国平均より低かった。耐震工事の実施は自治体や事務組合など各地の水道事業者が決めるが、費用は水道料金に上乗せされ住民負担が重くなる。維持コストも高い過疎地域で耐震化をどう進めるのかは、全国にも通じる課題だ。

石川県輪島市の水道復旧工事現場=1月22日
石川県輪島市の水道復旧工事現場=1月22日
1階部分がつぶれた自宅兼作業場で、捜し物をする田谷敏夫さん=1日午前、石川県輪島市門前町
1階部分がつぶれた自宅兼作業場で、捜し物をする田谷敏夫さん=1日午前、石川県輪島市門前町
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
都道府県別の水道管耐震適合率
都道府県別の水道管耐震適合率
石川県輪島市の水道復旧工事現場=1月22日
1階部分がつぶれた自宅兼作業場で、捜し物をする田谷敏夫さん=1日午前、石川県輪島市門前町
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
避難所でポリタンクに水をくむ避難者の男性=1日午後、石川県珠洲市
都道府県別の水道管耐震適合率

 ▽相当のダメージ
 「断水が不便。ゆっくり風呂に入りたい」。1日、輪島市門前町の田谷敏夫さん(72)は、1階部分がつぶれた自宅兼作業場からストーブなどを取り出しながらぼやいた。市内では、小学校に設けられた給水所にポリタンクや袋をさげた住民らがひっきりなしに訪れる。車中泊をしているという女性(60)は「一日一日を過ごすので精いっぱい」と疲れた様子だった。
 石川県によると1日現在、半島の6市町などで約4万戸が断水。仮復旧時期は輪島市、穴水町、能登町、志賀町が3月末までに、七尾市や珠洲市の一部地域は4月以降になる見通しだ。
 馳浩知事は1月27日の記者会見で水道の被害を「各市町の主要浄水場が多数被災し、配水池や配水本管が相当のダメージを受けていた」と説明。順次、通水、漏水調査、修繕を進めるが、道路状況が悪く作業員の行き来に時間がかかることも復旧遅れの原因という。
 ▽対策求め
 奥能登と呼ばれる半島北部は、過疎化が進み人口密度が低いため、水道の維持コストがかさんで水道料金が高い。馳氏は「奥能登の水道料金は金沢の2倍。工事費は利用者の料金に跳ね返るため、これが耐震化の遅れにつながっていたと指摘せざるを得ない」と訴え、復旧や耐震化の費用が住民の負担にならないよう国に対策を求めた。
 基幹的な水道管のうち、その場所で想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す耐震適合率。厚生労働省の2021年度末時点のまとめでは、石川県は36・8%と全国平均(41・2%)より低い。ただ、60%を上回っているのは神奈川(73・1%)、東京(66・0%)、千葉(60・3%)の首都圏3都県だけで、最も低い高知県では23・2%と、地域差が大きいのが実情だ。
 ▽目標60%
 過去の災害でも水道の復旧は課題となってきた。厚労省によると、1995年の阪神大震災では約130万戸、2011年の東日本大震災では約257万戸で断水が発生。最大断水日数は、それぞれ約3カ月、約5カ月だった。
 国は地震や津波などの自然災害に備え「国土強靱化基本計画」を14年に策定し、おおむね5年ごとに見直すとした。水道は28年度末までに耐震適合率を60%にする目標を掲げている。
 耐震化を進めるため国は交付金の活用も呼びかけるが、地方の財政状況は厳しい。厚労省担当者は「能登地震の被災状況を分析し、費用負担の新たな枠組みについても検討したい」と話す。

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