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【米金融政策】堅調経済、軟着陸に現実味 恩恵の格差、落とし穴も

 米連邦準備制度理事会(FRB)が4会合連続で政策金利の据え置きを決めた。高速での利上げに伴い景気後退が不可避とみられた米経済は予想以上の堅調さを保ち、軟着陸が現実味を増す。一方、その恩恵を巡る格差も目立つなど、なお落とし穴が潜む。

米ワシントンのスーパーマーケットの店頭=1月(共同)
米ワシントンのスーパーマーケットの店頭=1月(共同)
FRB本部近くにあるホームレスのテント村=1月、米ワシントン(共同)
FRB本部近くにあるホームレスのテント村=1月、米ワシントン(共同)
米国の物価上昇率と失業率の推移
米国の物価上昇率と失業率の推移
米ワシントンのスーパーマーケットの店頭=1月(共同)
FRB本部近くにあるホームレスのテント村=1月、米ワシントン(共同)
米国の物価上昇率と失業率の推移

 ▽力強さ
 「現時点で勝利宣言をしようとはしていない」。1月31日に開かれた記者会見。慎重なパウエル議長らしく、物価抑制に成功したと高々と誇る場面は皆無だった。
 一方、淡々とした口調で「成長は力強い」「労働市場も非常に好調だ」と語る姿からは、政策運営への自信ものぞく。2022年6月に前年同月比9・1%上昇を記録した消費者物価指数は、23年12月には3・4%に鈍化。一時14・8%まで悪化した失業率は、利上げ後も低水準を保ち、23年12月に3・7%だった。
 ▽不況心理改善
 直近発表された23年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比3・3%増と、事前予想を超える強さを示した。バイデン政権の高官は「どう見ても米経済は良い」と述べ、経済の「軟着陸」が近い証拠だと評価した。
 物価高に苦しむ米市民から、バイデン大統領の経済政策は不評だったが、変化の兆しも見られる。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、インフレ沈静化などの良いニュースの浸透から「(人々が心理的に不況と感じる)『バイブセッション』が終わりつつある」と分析。株価は過去最高値圏で推移し、市場の関心は利下げの開始時期に移っている。
 ▽最も不平等
 一方、堅調な経済の裏で「貧富の格差」という構造的な課題は深刻さを増す。米セントルイス連邦準備銀行によると、上位1%の富裕層が株式や投信の53・7%を握り、09年初めの44・3%から9・4ポイントも上昇。「株式市場は史上最も不平等になった」(米メディア)と言われ、果実の偏在ぶりが顕著になっている。
 大都市などではホームレスの姿も目立ち、生活困窮者にとって物価上昇はより深刻な問題だ。ワシントン金融政策研究所のエリカ・ウィリアムズ事務局長は「底辺の人々を引き上げ、富裕層に公平な負担を求める政治的意志がさらに必要だ」と語った。(ワシントン共同=金友久美子)

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