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【デジタルファースト~取り残される人々】学校のデジタル活用道半ば 戸惑う現場、研修に注力 端末利用、不慣れな教員も

 新型コロナウイルス禍で加速した政府肝いりの「GIGAスクール構想」に基づき、全小中学生に配られたデジタル端末。ほぼ毎日使っているのは3割程度で、学校ごとに活用度合いに差が生まれている。電子黒板やタブレット端末に不慣れな教員も多く、教える側の課題に対処し切れていないことが背景にある。デジタル研修に注力するなど現場では模索が続く。

熊本市立豊田小で開かれた教員向けのデジタル研修会=2023年12月
熊本市立豊田小で開かれた教員向けのデジタル研修会=2023年12月
教員にタブレット端末の使い方を教える荒川美穂子指導主事(左)=2023年12月、熊本市
教員にタブレット端末の使い方を教える荒川美穂子指導主事(左)=2023年12月、熊本市
取材に応じる熊本市教育センターの荒川美穂子指導主事
取材に応じる熊本市教育センターの荒川美穂子指導主事
タブレット端末を使用した研修を受ける教員たち=2023年12月、熊本市
タブレット端末を使用した研修を受ける教員たち=2023年12月、熊本市
タブレット端末で作成したスライドを披露する教員(左端)=2023年12月、熊本市
タブレット端末で作成したスライドを披露する教員(左端)=2023年12月、熊本市
熊本市立豊田小で開かれた教員向けのデジタル研修会=2023年12月
教員にタブレット端末の使い方を教える荒川美穂子指導主事(左)=2023年12月、熊本市
取材に応じる熊本市教育センターの荒川美穂子指導主事
タブレット端末を使用した研修を受ける教員たち=2023年12月、熊本市
タブレット端末で作成したスライドを披露する教員(左端)=2023年12月、熊本市

 ▽新しい方法
 「アニメーション効果を付けて自由に物語を作ってみましょう」。熊本市立豊田小で2023年12月に開かれた同校教員向け研修会。同市教育センターの荒川美穂子指導主事(47)が児童役の教員十数人に呼びかけた。
 教員はタブレットで手描きの絵を取り込むなどしてスライドを作成。それぞれ披露すると「どうやってやったの」「面白いストーリーだね」などと感想を言い合った。
 タブレット活用で児童の表現力向上が期待できるといい、同校で理科を担当する松尾典征教諭(54)は「新しい方法を取り入れたい」と話した。
 ただ、子育てが一段落し教育現場に復帰したばかりという同校の下川朝美教諭(44)は前向きではあるものの「デジタル改革に戸惑うこともありなかなか追いつけていない」と吐露。「タブレットは児童の印象に残りにくい」との声もあり、ノートや鉛筆の授業を優先する教員も多いという。
 ▽定着へ
 構想の旗振り役でもある文部科学省は、デジタル機器の使い方などをサポートする「GIGAスクール運営支援センター」を自治体が整備するための費用を一部負担したり、先進事例をホームページで紹介したりして定着を目指している。
 文科省の調査では、全国の公立校教員のうち、22年度に研修を受けたのは約7割。都道府県別では和歌山県(95・0%)が最高だったが、5~6割程度の自治体もあった。京都府教育委員会は23年度から府立の中高、特別支援学校の全教員に研修を義務化した。
 文科省の別の23年度調査によると、5年生までの授業で「ほぼ毎日」端末を使用していると答えたのは全国の小学6年生のうち28・4%にとどまり、活用頻度に差があった。京都府教委担当者は「教員間で格差が広がっている」と説明する。
 信州大の佐藤和紀准教授(教育工学)は教員がデジタル端末を継続的に使えるようにするには「業務が効率化され、働きやすくなったなどと実感できるかが重要だ」と強調、研修を継続的に実施する必要もあると主張した。「学校や市町村単位で、端末を使った授業を一緒に考えてくれるアドバイザーのような『伴走者』がいると良い」とも指摘した。

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