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【UNRWA資金拠出一時停止】人道危機、深刻化の懸念 ガザ住民、日本に失望も

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフがイスラム組織ハマスのイスラエル奇襲に関与した疑惑を受け、日米欧10カ国以上が資金拠出の一時停止を発表した。イスラエル軍が侵攻するパレスチナ自治区ガザでは、多くの住民がUNRWAの支援に依存。長期化すれば人道危機のさらなる深刻化が懸念され、日本への失望を口にする住民もいる。

避難民が多く集まるUNRWA運営の学校=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
避難民が多く集まるUNRWA運営の学校=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
UNRWA運営の学校敷地内にテントを張り、避難生活を送るハニ・サレハさん(左)=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
UNRWA運営の学校敷地内にテントを張り、避難生活を送るハニ・サレハさん(左)=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
UNRWAへの資金拠出を一時停止した主な国
UNRWAへの資金拠出を一時停止した主な国
避難民が多く集まるUNRWA運営の学校=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
UNRWA運営の学校敷地内にテントを張り、避難生活を送るハニ・サレハさん(左)=1月28日、パレスチナ自治区ガザ南部ラファ(共同)
UNRWAへの資金拠出を一時停止した主な国

 「UNRWAの支援がなくなれば、多くの住民が飢え死にする」。1月下旬、ガザ南部ラファ。UNRWA運営の学校で家族12人と避難生活を送るハニ・サレハさん(66)が共同通信ガザ通信員に嘆いた。「週に2回、ツナ缶や豆などの食料が配給される。現状でも足りないのに、なくなったらどうなるのか…」
 UNRWAによると、ガザでは170万人が自宅を追われ、多くがUNRWAの施設に避難。UNRWAは食料のほか、毛布や衛生用品など生活必需品を提供、各避難所に医師らも派遣する。
 UNRWAは1948年のイスラエル建国に伴い故郷を追われたパレスチナ難民やその子孫への支援組織で「現場で基本的サービスを担う最も重要な組織」(国連関係者)。報道官は「資金拠出停止が続けば人道活動は2月末までしかできない」と危機感をあらわにする。
 イスラエルを支援する米政府が奇襲疑惑を理由に26日に拠出の一時停止を発表、日本や欧州諸国が追随した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエルはUNRWAの学校職員らが奇襲や女性誘拐、弾薬提供などに関わったとみている。国連は関与したとされるスタッフを解雇し、調査に乗り出している。
 ある外交筋は一時停止について「拠出金がイスラエル攻撃に使われていないことを確実にするために必要だ」と主張。国際法に詳しいウィーン大のウルズラ・クリーバウム教授は拠出金停止は各国の裁量だと説明する。
 一方、ガザ住民からは欧米諸国への憎しみも。「仮に約10人が奇襲に関与していたとして、なぜパレスチナ人全体が罰を受けるのか」とラファのアクラム・バハアさん(37)。フサム・アブハマドさん(48)は「日本にはこれまでの支援に感謝していたが、停止と聞いて失望した」と話す。
 国連のアルバネーゼ特別報告者(パレスチナ自治区の人権担当)は国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに人道支援物資の搬入を強化するよう仮処分命令を出したことに触れ、「停止の動きはジェノサイド(民族大量虐殺)条約上の義務違反に当たる可能性がある」と指摘した。(エルサレム、ウィーン共同=平野雄吾、岡田隆司)

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