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【能登半島地震】穴水町長「被災、想像外」 ヒッチハイクで登庁 応援職員派遣に感謝

 能登半島地震から1カ月になるのを前に、最大震度6強を観測した石川県穴水町の吉村光輝町長(53)が、共同通信のインタビューに応じた。地震当日は徒歩で土砂を乗り越え、車をヒッチハイクして登庁。「町全体が大規模に被災するとは、全く想像していなかった。職員の参集もままならなかった」と混乱を振り返り、全国からの応援職員派遣に感謝した。

石川県穴水町役場で対応に当たる吉村光輝町長(左)=24日
石川県穴水町役場で対応に当たる吉村光輝町長(左)=24日
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
石川県・穴水町
石川県・穴水町
石川県穴水町役場で対応に当たる吉村光輝町長(左)=24日
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
インタビューに応じる石川県穴水町の吉村光輝町長
石川県・穴水町

 1日午後4時10分ごろ、自宅で強い揺れに遭った。家族の安全を確認しながら馳浩知事の携帯電話に連絡した。「大変な地震が起きました。庁舎に向かいます」
 車に乗り込み、自分で運転した。途中、土砂崩れが道路をふさいでいた。「大変だ」。再び知事に電話し、自衛隊派遣を要請した。馳知事は「既に頼んでいる。私も今から(東京から石川へ)戻る」。
 吉村町長は車を出て徒歩で土砂を乗り越え、通りかかった車に乗せてもらった。普段は、自宅から車で5分ほどだが、この日は役場に着くまで40分くらいかかった。
 登庁すると、6~7人の職員がいた。約100人いる職員の10分の1にも満たない数だった。多くの職員が被災しており、悪路ですぐに駆け付けられなかった。
 「この数でやるしかない」。午後5時45分、災害対策本部を立ち上げ、情報収集を急いだ。次第に役場に集まってきた職員らが途中、スマートフォンで撮影した町の様子は広範囲が悲惨な状況だった。家屋倒壊、道路崩壊や土砂崩れ…。「とにかく人命救助が優先だ」。職員に伝えた。
 直面したのが厳しい通信環境だった。直後は知事とつながったが、以降は電話やインターネットが通じない。町民に情報を伝える防災行政無線も機能しなかった。携帯電話会社に頼んで衛星電話を確保した。
 自宅が倒壊するなどして住めない町職員は約10人。避難所や庁内などに泊まりながら業務を続ける。ほかの職員も多くが「ほぼ泊まり込み」だ。自身も地震後約2週間は町長室にマットを敷いて、寝起きを繰り返した。「職員がいくらいても足りない。全国からの応援で本当に助かっている」
 吉村町長は「局所的に災害が起きて、サポートするという訓練はしていたが、町全体が被災するとは思ってもいなかった」と打ち明ける。
 町内の多くの地域は今も断水中で「こうしていれば良かった、という反省はまだ先の話。前を向いて一生懸命やるしかない。町民の生活を早く再建させたい」と話した。
   ×   ×
 よしむら・こうき 1970年穴水町生まれ。町議、町議会議長を経て2022年の町長選に無投票で当選。1期目。

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