テーマ : 読み応えあり

【人口移動報告】子育て世帯増、局所的 働き手不足で悪循環恐れ

 政府が2014年に打ち出した「東京一極集中の是正」は、実現の兆しが一向に見えない。狙い通りに子育て世帯などが増えた地方は局所的で、大半は若い女性を中心に流出が進む。働き手不足が生活の不便さを招き、さらなる人口減少につながる悪循環も懸念される。

人口が増え続ける中で進む、茨城県阿見町の宅地開発の現場=23日
人口が増え続ける中で進む、茨城県阿見町の宅地開発の現場=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場。人口5万人を超え、2026年度中に「令和初」となる新市制移行を目指している=23日
茨城県阿見町役場。人口5万人を超え、2026年度中に「令和初」となる新市制移行を目指している=23日
人口が増え続ける中で進む、茨城県阿見町の宅地開発の現場=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場に掲げられた「祝 常住人口5万人達成」の懸垂幕=23日
茨城県阿見町役場。人口5万人を超え、2026年度中に「令和初」となる新市制移行を目指している=23日

 ▽昇格
 「祝 常住人口5万人達成」。茨城県南部に位置し、東京から約60キロの阿見町の役場には、長さ約5メートルの懸垂幕が誇らしげに風にはためく。
 長らく人口4万8千人前後で推移していたが、圏央道のインターチェンジ開設や大型商業施設の整備を背景に、20年ごろから人口が急増。東京まで通勤可能な好立地や割安な宅地開発もあり、23年10月末に市へと「昇格」するのに必要な5万人を超えた。
 23年の転入超過は536人と、全国の町村で最も多い。18歳までの医療費無料化やランドセル配布など子育て支援も充実しており、移り住むのは働き盛りの家族が中心だ。年に約50人のペースで子どもの数が増えており、小学校の教室も増設するという。
 町は26年度中に「令和初」となる新市移行を目指しており、担当の糸賀昌士政策企画課長は「住民サービスの幅が広がり、イメージアップにもつながる」と期待する。
 ▽干渉
 政府が目指す姿を体現する阿見町だが、全国的に見ると例外だ。人口移動報告によると、23年は市町村の70%超が転出超過。特に女性の流出が深刻で、東京圏の転入超過を見ると男性より女性の方が約1万1千人多い。
 要因の一つと考えられているのは女性が抱える閉塞感だ。複数回答で尋ねた22年の内閣府調査では、上京理由として「他人の干渉が少ない」を挙げた女性は23・9%で、男性12・6%の約2倍。「多様な価値観が受け入れられる」も女性13・4%、男性5・7%と開きがあった。
 経済界有志や有識者でつくる「人口戦略会議」は1月、自治体や企業に対し、多様性が尊重され、若者や女性が希望を持って働ける環境づくりを求める提言を公表。メンバーの増田寛也元総務相は記者会見で「若者が東京に行くことを嘆く人は多いが、原因は自分たちがつくっていることに気付いてほしい」と訴えた。
 ▽縮小
 昨年末の内閣府リポートによると、19年以降、15歳以上の労働力人口が増加傾向なのは、東京を含む「南関東」と大阪などの「近畿」だけだ。
 人手不足は公共交通の縮小に表れ、福井や愛媛など各県で、地方鉄道の減便や観光列車の運休が相次ぐ。バス事業はさらに厳しく、民間調査によると、公営を除く主要なバス事業者のうち、約8割が23年中に路線の廃止や減便に踏み切った。
 「人手不足がサービス縮小を招き、不便さが若者の流出に拍車をかけている」と政府関係者。自動運転などデジタル技術を活用し、地方の生活利便性を高める「デジタル田園都市国家構想」を進めるが、効果が出るには相当の時間が必要と見込まれている。

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞