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【トヨタグループ不正】風土改革へ問われる手腕 ものづくりの信頼低下も

 トヨタ自動車の豊田章男会長が自身がグループ全体の「責任者になる」と表明し、不正が相次ぐ組織風土を改革すると約束した。世界最大の自動車メーカーの不祥事は、日本のものづくりの信頼低下につながりかねない。トヨタ自身の責任を問う声もある中、豊田氏のグループ総帥としての手腕が問われる。

トヨタグループの主な不正
トヨタグループの主な不正

 ▽正しさ
 大正時代の工場跡地につくられたトヨタ産業技術記念館で30日に開いた記者会見。豊田氏は曽祖父・佐吉が母の仕事を楽にするために自動織機を発明したことから始まるグループの歴史を一通り振り返った後、かつて大規模リコール問題を起こしたトヨタと今回不正のあった豊田自動織機などとを重ねて謝罪した。
 「今私がやるべきことは、グループが進むべき方向を示し、立ち戻る場所をつくることだ」と強調。会見に先立ってグループ各社のトップを集め、「誠実を貫き、正しくつくろう」などとする心構えを共有した。
 生産の現場に「正しいものづくり」の意識を浸透させることは喫緊の課題だ。株主の立場で各社の株主総会に出席し、経営にも目を光らせる意向も明かした。
 ▽共通項
 トヨタグループ各社の不正には共通点がある。開発スケジュールを優先し、いずれも車を大量生産する際に必要な認証制度をないがしろにしていた。本来はチェック機能を果たすべき認証部門が開発部門と一体になって機能不全を起こしたり、担当者の人員を削減したりと、構造的にも似通う部分が多い。
 東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「グループ企業にとってトヨタはグループの中心である一方、最大の取引先だ。トヨタが考えている以上にプレッシャーを感じてしまった可能性もある」と指摘した。
 ▽影響力
 トヨタグループの影響力は大きく、財界や国も一連の不祥事を注視する。経済同友会の新浪剛史代表幹事は30日の会見で「世界ナンバーワンの企業グループ群の製造過程でそういうことがあったのは非常にショッキング。他山の石にしなきゃいけない」と述べた。
 斉藤鉄夫国土交通相は30日の閣議後会見で「グループ全体に共通する問題があるかどうか、個々の企業の調査結果を踏まえて検討する」と表明した。
 現行の道路運送車両法には、グループ会社の不祥事で親会社を直接立ち入り検査し、処分する仕組みはないが、国交省の担当者は「立ち入り検査の内容次第では、トヨタにも話を聞くことはあり得る」との見方を示した。

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