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今年も「熱いスト」続く? 米、テスラやトヨタ試金石 賃上げ生む米労働運動

 米国で労働組合の活動が目立っている。2023年は全米自動車労働組合(UAW)が大規模ストライキを実施し、ハリウッド俳優らも待遇改善に動いた。スト参加者は前年の3倍近くに急増。24年に入っても、物価高を背景に「熱いスト」が続くと予想されている。

オンラインで演説するUAWのフェイン会長=2023年11月(共同)
オンラインで演説するUAWのフェイン会長=2023年11月(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
米ワシントンの路上で賃上げを訴える清掃員ら=2023年9月(共同)
米ワシントンの路上で賃上げを訴える清掃員ら=2023年9月(共同)
米国のスト参加者数の推移
米国のスト参加者数の推移
オンラインで演説するUAWのフェイン会長=2023年11月(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
ワシントン・ポスト労組が実施したストライキ=2023年12月、ワシントン(共同)
米ワシントンの路上で賃上げを訴える清掃員ら=2023年9月(共同)
米国のスト参加者数の推移

 「われわれは今日も闘うぞ」。米首都ワシントンの通りで昨年9月、中南米移民の十数人が横断幕や旗を手に、スペイン語で歌ったり、叫んだりしていた。多くが目の前のビルの清掃員。契約期限が迫り、時給の引き上げを訴えているという。
 向かいのビルから駆け付けたヘクター・ペレズさんは「契約はそれぞれ違うが声を上げなければ待遇が悪くなるばかり。帰宅途中に応援に来た」と話す。地元報道によると、世界銀行などの国際機関を含め、ワシントン圏の清掃員らは2~3割の賃上げを勝ち取った。
 さらに昨年12月には名門紙ワシントン・ポストの労組が48年ぶりの大規模ストに踏み切った。「会社側が誠実でない」と憤るのはグラフィック部署の女性。米国でプラカードを手に練り歩く姿は、いまや日常茶飯事だ。
 米コーネル大によると、23年には全米で450件のストが発生。参加者は11月までで51万人と、前年同期の2・7倍に跳ね上がった。全米映画俳優組合やUAWによる大手自動車3社ビッグスリーでの同時ストが、参加者数を押し上げた。
 労組の平均組織率こそ低迷が続くが、世論の支持は高い。ロイター通信などが昨年9月に実施した調査では、約6割の人がハリウッドや自動車産業のストに賛同。労組を支持母体とする民主党だけでなく、共和党支持者も半数近くが支持した。
 24年にも労組結成やストの頻発が続きそうだが、中でも注目されるのが自動車業界だ。
 「今度はあなたたちの番だ」。昨年のストで25%の賃上げを実現させたUAWのフェイン会長は、電気自動車(EV)大手の米テスラなど、組合がない10社超を名指しし、労組結成を呼びかける。トヨタ自動車やホンダ、日産自動車、SUBARU(スバル)、マツダの日本勢も含んだ。
 一方、組合嫌いで知られるテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は昨年9月、労組側の要求を巡り「(企業を)高速で破綻に追い込むやり口だ」と、UAWを早々にけん制。テスラや日本企業での労組結成可否などが、今後の米国での労働運動を占う試金石にもなっている。(ワシントン、ニューヨーク共同=金友久美子、杉山順平)

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