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【ミャンマーASEAN会議出席】軍政とASEAN利害一致 関係改善へ「人道支援」

 ミャンマー軍事政権と東南アジア諸国連合(ASEAN)が関係改善に動き出した。クーデターから3年を前に、これまで拒否していた外相会議にミャンマー外務省高官が出席。武装勢力の攻勢を受け苦境に立つ軍政と、関与の糸口が見つからず焦り始めたASEANの利害が一致した。隣国タイが打ち出した避難民支援の「人道回廊」を軸に関与強化を目指す。

記者会見するラオスの外相とミャンマー国旗(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)
記者会見するラオスの外相とミャンマー国旗(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)
ASEAN外相会議に出席したミャンマー外務省高官(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)
ASEAN外相会議に出席したミャンマー外務省高官(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)
記者会見するラオスの外相とミャンマー国旗(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)
ASEAN外相会議に出席したミャンマー外務省高官(手前)=29日、ラオス北部ルアンプラバン(共同)

 「高官の参加を歓迎する。ミャンマー情勢は一朝一夕には解決しないが、皆少しだけ前向きに感じている」。議長国ラオスのサルムサイ外相は閉幕後の記者会見で遠慮がちに成果を誇った。
 ASEANは2021年2月1日のクーデターの後、暴力の停止などを求めた「5項目の合意」をまとめたが、履行されずに手詰まり状態に。同10月以降は、主要会議に「閣僚」を派遣して国際社会に統治の正当性をアピールしようとした軍政に対し、民主主義国家のインドネシアなどが拒んだ。外交官ら「非政治的な代表」であれば認めると表明したが、軍政は反発して関係が断絶した。
 今回軍政が派遣したのは「外相」ではなく外務省高官。ASEANの要求をついにのんだ。ミャンマーでは昨年10月下旬に北東部シャン州などで少数民族武装勢力の一斉蜂起が起きた。国軍は多数の拠点を奪われ弱体化が指摘される。中国が地域限定の停戦合意を主導して存在感を増すが、軍政は中国の関与が強まり過ぎることを警戒、ASEANににじり寄った。
 戦闘停止などASEANの要求は軍政にとってハードルが高いが、5項目合意の中で「人道支援の実施」は受け入れやすい。タイのミャンマー国境には避難民が押し寄せており、支援強化に積極姿勢を見せるタイや議長国ラオスが外相会議を前に軍政に接触、道筋をつけていた。
 ラオスによると、外相会議でタイが「人道回廊」を設置して避難民に支援物資を届ける構想を打ち出した。タイのバーンプリー外相は記者団に、国境を接する北西部メソトに支援拠点設置を検討する考えを示した。
 ASEAN各国はタイの提案に賛同したが、具体策は不明だ。国境地帯は約20の少数民族による支配地域が広く、それぞれ利権を握っている。「少数民族の協力なしに支援は実現可能なのか」。ミャンマーからタイ北西部に避難している民主派活動家の男性は軍政とASEANの急速な接近に疑問を投げかけた。(ラオス北部ルアンプラバン共同=伊藤元輝)

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