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【中国恒大】不動産不況、遠い出口 習指導部に“冷や水”

 中国不動産不況の象徴的な存在、中国恒大集団に香港高等法院(高裁)が清算命令を出した。再建計画が一向に進まない状況に高裁がしびれを切らした。不動産バブル崩壊阻止を図る習近平指導部に冷や水を浴びせた格好。習指導部は清算命令の影響が中国本土に及ぶことを警戒するが、信用不安が広がり不動産市場が一層冷え込むのは避けられない。不況の出口はさらに遠のいた。

北京にある中国恒大の物件=2023年9月(ロイター=共同)
北京にある中国恒大の物件=2023年9月(ロイター=共同)
中国恒大を巡る構図(写真はAP)
中国恒大を巡る構図(写真はAP)
北京にある中国恒大の物件=2023年9月(ロイター=共同)
中国恒大を巡る構図(写真はAP)

 ▽切り捨て
 「前回審理で詳細な債務再編計画を求めたが何も進展はなかった。いいかげんにしてほしい」。高裁の裁判官はいらだちを隠さず、清算命令を宣告した。恒大側はすがるように審理延期を求めたが、「延期する理由はない」と切り捨てた。
 「極めて遺憾だ」。恒大の肖恩最高経営責任者(CEO)は中国紙に不満を表明し「正常な経営」を目指すと言い張った。
 ▽抑え込み
 「家を受け取っていない人はどうすればいいのか」「お金はどこに消えた」。国営メディアが清算命令を速報すると、交流サイト(SNS)に不安の投稿が相次いだ。
 中国では恒大をはじめ経営難に陥った不動産企業がマンションなどの工事を中断し「物件が引き渡されず、支払ったお金も戻ってこない」として購入者による抗議活動が多発。清算命令で不動産企業への不信感が一層高まり、トラブルが増える恐れがある。
 中国当局は不安を抑え込もうと躍起だ。最高人民法院(最高裁)は清算命令が出たのとほぼ同時に、命令の効力が本土に及ばない可能性をにおわせる発表を行った。中国メディアは抑制的に報道。一部SNSでは恒大に関するコメントの書き込みが規制された。
 ▽戦々恐々
 恒大の経営危機は2020年に習指導部が不動産企業への融資を規制したことがきっかけだ。住宅価格高騰を抑えて市場を健全化する目的だったが、大手企業が次々と資金繰りに窮した。銀行が不良債権化を恐れて不動産企業への融資を控える貸し渋りもまん延している。
 中国政府は金融緩和や市場活性化策を打ち出してきたが、効果は上がっていない。
 「清算命令で中国市場の不確実性はさらに高まった」。先行きは見通せず、市場関係者は戦々恐々としている。(香港、北京共同=一井源太郎、清水敬善)

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