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【豊田自動織機で不正】相次ぐ不正、トヨタ岐路 グループ統治改革急務に

 トヨタ自動車が岐路に立っている。完全子会社ダイハツ工業に続き、主要グループ企業の豊田自動織機で新たに自動車のエンジンが絡む不正が発覚した。トヨタはスポーツタイプ多目的車(SUV)「ランドクルーザー」や商用車「ハイエース」など人気車種の出荷を世界で停止し、ダイハツの生産分も含めて多くの車種を出荷できない異例の事態に陥った。トヨタのグループ統治改革は急務となっている。

豊田自動織機の不正が原因で出荷を停止した車種
豊田自動織機の不正が原因で出荷を停止した車種

 ▽源流
 トヨタは豊田自動織機の「自動車部」から発展した。豊田織機はいわばトヨタの源流だ。トヨタの佐藤恒治社長は29日、報道陣に対し「両社のコミュニケーションに改善すべき課題があった」と反省を口にした。
 自動車エンジンでの不正の端緒は、昨年3月に公表されたフォークリフト用エンジンの不正だった。排出ガスの認証を巡る耐久試験で、排出ガス成分の実測値を使わずに推定値を用いて結果に代えるなどした。
 この問題を調べた特別調査委員会は、豊田織機が手がけるエンジンの9割程度が自動車向けであることに着目。調査範囲を拡大し、トヨタに提出するエンジンの出力試験のデータを脚色していたことをつかんだ。
 ディーゼルエンジンの出力試験時に量産用とは異なるソフトを用いて性能を測定し、数値が安定するように書き直していた。該当のエンジンが搭載された車は「ハイラックス」や「フォーチュナー」など10車種に及ぶ。
 調査委の委員長を務めた井上宏弁護士は「客観的であるべき測定データを大切に取り扱うという意識が組織の中でまひしてしまっていた」と指摘した。
 ▽ひずみ
 トヨタは新車の好調な販売を背景に順調に成長を遂げている。ただその裏では成長のひずみと言えるような事象も生じている。
 国内生産のペースは1日に1万5千台に迫る中、現場からは「高負荷生産が続けば人材育成に充てる時間がなくなり、競争力低下につながる」といった懸念が出ているという。仕入れ先の従業員の安全面を不安視する声もある。昨年はこれまでになかったようなシステム障害による工場停止も起きた。
 トヨタ自身も現状を重くみて、現場に余力やゆとりを持たせるために「いったん立ち止まる」選択を検討している。新型車の開発プロジェクトや生産台数の見直しを視野に入れており、既に仕入れ先など350社にこの方針を伝えた。
 30日には豊田章男会長が新たな「グループビジョン」を発表する記者会見を開く。不正の再発を防ぐ抜本的な企業風土改革にどう取り組むのかが問われている。

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