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依存性高い「ガチャ」 ネットゲームのトラブル深刻 「対策強化を」と専門家指摘

 子どものオンラインゲームを巡るトラブルが深刻化している。特に「ガチャ」と呼ばれる、当たれば特別なアイテムが手に入る一種のくじ引きがやめられず、支払いが高額になったり、治療が必要になるほどのめり込んだりする例がある。

国立病院機構久里浜医療センターの樋口進名誉院長
国立病院機構久里浜医療センターの樋口進名誉院長
スマートフォンでゲームをする男子高校生(写真と本文は関係ありません)
スマートフォンでゲームをする男子高校生(写真と本文は関係ありません)
小中高校生のオンラインゲームに関する相談件数
小中高校生のオンラインゲームに関する相談件数
国立病院機構久里浜医療センターの樋口進名誉院長
スマートフォンでゲームをする男子高校生(写真と本文は関係ありません)
小中高校生のオンラインゲームに関する相談件数

 依存に詳しい国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県)の樋口進名誉院長は「ゲーム障害とギャンブル依存が重なったような子がいる」として、依存性の高いゲームについて周知と対策の強化が必要と話している。
 久里浜医療センターのインターネット依存外来で治療を受けたある男子高校生は、中学卒業前、ゲームから離れられなくなった。学校を休んで部屋に引きこもり、支払いは月に5万円以上。母親が金を出し渋ると暴れた。受診してようやく「生活を改めたい」と意欲が出てきたという。
 国民生活センターによると、新型コロナウイルス流行下で小中高校生のオンラインゲーム関連のトラブル相談は増えた。2018年度の1957件から20年度は3723件。親のクレジットカードの無断使用などが目立ち、支払い済み額は10万円以上50万円未満のケースが多かった。
 樋口さんが問題視するのが「ガチャ」だ。名称は、お金を入れるとカプセル入りのおもちゃが出てくる販売機に由来する。多くのオンラインゲームに組み込まれており、パソコンやスマートフォンの画面でボタンを選ぶと抽選が始まる。1回は無料や少額でも「外れた。次こそは」と熱くなって続けるうちに支払いがかさむことが多い。「勝ち負けがあるからギャンブルと同様、ゲームへの依存性を高める要因になっている」と樋口さんは指摘する。
 世界保健機関(WHO)は19年「ゲーム障害」を、依存症の一種と認定した。ゲームをしたい衝動を抑えられず、問題が起きても続けてしまう。世界の有病率は3%程度と推定する研究があり、男性に多い傾向が報告されている。
 久里浜医療センターのネット外来の患者はほとんどが10代。根本的な治療法はないものの、例えばうつ病を合併していれば薬物治療が行われる。
 行動療法も有効との報告があり、センターでは自然の中で患者の合宿も実施する。学校で友人と交流するだけで症状が改善する子もいるという。
 ゲーム依存対策として、国は相談マニュアルを作成し、子どもの多額支払いを防ごうと年齢の入力を求めるゲームもあるが樋口さんは不十分だと考える。「まずはゲームの依存性を社会に広く知らせるべきだ」とした上で「依存度が高まると治療の選択肢は限られる。治療に当たる施設は増えているので早めに相談を」と話す。同センターホームページに各地の施設の一覧表を掲載している。

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