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テーマ : 三島市

ヴァンジ美術館、静岡県が跡地取得へ 12月補正に関連経費計上へ最終調整

 静岡県が無償譲渡の申し出を受けている「ヴァンジ彫刻庭園美術館」(長泉町、閉館)について、静岡県は県議会12月定例会に提出する2023年度12月補正予算案に、跡地の取得を前提とした関連経費を計上する方向で最終調整していることが20日までの関係者への取材で分かった。
9月末に閉館し、ひっそりとしたヴァンジ彫刻庭園美術館の入り口=10月初旬、長泉町
 同美術館を巡っては県東部の行政関係者や民間が県による支援や利活用を求める中、県議会各会派からは美術館の取得や運営に対し「不採算施設を県有化する先例となる」などの懸念が示され、これまで議論に約2年を費やした。補正予算案が12月定例会に提出された場合、県議会の判断が注目される。
ヴァンジ彫刻庭園美術館を巡る経過
 12月補正予算案には23年度分の維持管理費や利活用計画策定費を盛り込む見通し。県試算では管理運営費は年間約9千万円。県は、早急に手入れをしないと庭や施設の修繕費が増大する可能性がある上、民間活力導入に向けた対外的な協議には県が跡地を所有する必要があるとみている。
 川勝平太知事に近い第2会派ふじのくに県民クラブは、これまで多くの案件で知事提出議案に賛成の立場をとってきた。しかし、ヴァンジ彫刻庭園美術館は、無償譲渡の打診が運営法人から県にもたらされた21年10月当初から、「民営化による行革と逆行する」(会派幹部)と慎重な姿勢を示してきた。県議会9月定例会でも同会派は代表質問で「公設公営に反対」と民活導入を強く求めた。ただ、会派内には現在の政局を踏まえれば補正予算案に反対しにくいとの意見もある。
 一方、知事との対立が深まる最大会派自民改革会議は、同美術館に関しては県東部の県議を中心に比較的前向きに議論を重ねてきた。9月定例会文化観光委員会では、自民会派の委員から、利用計画策定のため、早期の跡地取得と予算案提出を促す意見も出た。
 ところが、その後、同美術館から地理的に近い三島市内の国有地に東アジア文化都市のレガシー(遺産)拠点を置きたいとする知事の発言が飛び出した。10月下旬の同委員会閉会中審査では、県スポーツ・文化観光部幹部が「具体的な検討をする環境にない」と、同美術館の跡地利用と知事発言の関連性を否定。跡地利活用に推進の立場の委員は、県幹部の説明に理解を示しつつ、「(議論を)練りに練っているさなかの(知事の)発言に憤慨している」と非難した。知事発言については県議会総務委員会の閉会中審査が継続中で、会派内には発言への疑義も残る。
東部・伊豆の文化推進拠点に
 ヴァンジ彫刻庭園美術館の運営法人は2021年10月、新型コロナウイルス禍などによる経営難を理由に、県に経営支援や無償譲渡を申し出た。
 県は当初、美術館の継続を検討したが、所蔵品の権利関係の課題もあり継承を断念。地元負担や活用コンセプト明示を求めた有識者検討会の意見を踏まえ、22年12月に「芸術活動の交流拠点」とのコンセプト案を県議会に示したが、理解が得られず、23年度当初予算への計上を見送った。
 県と地元5市町(沼津、三島、裾野、清水、長泉)は23年2月に構想検討会議を設立し、同美術館跡地と複数施設の一体的な活用を掲げた「クレマチスの丘広域的活用構想案」を同年7月の県議会6月定例会文化観光委員会で提示。市町や民間文化施設との連携による「東部・伊豆地域アートフォーラム」(仮称)を設立し、跡地を東部・伊豆の文化推進拠点にする意向をまとめた。
(政治部・青島英治)

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