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テーマ : 三島市

東アジア文化都市認知度低迷、目標は上回る 静岡県が事業総括 「継承」は不透明 【東アジア文化都市】

 静岡県が2023年の国内開催都市として事業展開した東アジア文化都市事業が12月末で終了する。県が26日までにまとめた実績は事業数、来場者数、経済効果額はいずれも目標を上回った。ただ、本来の目的である日中韓3カ国間の都市交流は限定され、認知度は低迷した。10月には三島市内の国有地に発展的継承センターを整備したいとの川勝平太知事の発言が県議会で問題視され、レガシー(遺産)の継承や事業展開は現時点で見通せない。

東アジア文化都市事業のカテゴリー別件数
東アジア文化都市事業のカテゴリー別件数

 県は過去最大規模を目指す知事の下、約21億円を投じ、専従の組織や職員を置き、過去の都市に前例のない注力で事業を進めた。その結果、事業数は966件(目標値500件)、来場者数896万人(同360万人)、経済効果額は速報値で232億円(同100億円以上)となり、目標を大幅に上回った。
 県担当者は、従来の芸術の枠を超えてスポーツや食、生活様式など幅広い分野を文化と捉えたことや、助成や認証制度によって事業数全体の7割以上を市町や民間主催事業が占め、市町や民間の参画が成果に貢献したと分析する。「事業分野は多岐にわたり、改めて本県の文化資源の豊富さを証明した」とし、「脱コロナ」の機運醸成や魅力発信の効果も強調した。既存の大型イベントを取り込んだ手法の是非や東アジア文化都市の認知度の低さが庁内外から指摘されたが、県は民間や市町との連携で100件以上の新規事業が創出され、大規模事業を除いても約21億円の投資を上回る効果があったとした。
 課題には認知度低迷などが挙がる。県は国に対し、都市決定の前倒しや省庁横断での支援などの改善点を提案した。中韓は事業開始1年前には都市を決めて準備したが、本県選定は22年8月で準備期間が短い上、事業開始や広報は、経費を盛り込んだ新年度予算の成立を待たねばならず、23年3月中旬と出遅れた。
 同事業では都市間交流の難しさにも直面した。韓国全州市とは行政機関、民間を含めた多彩な交流が実現し、同市と静岡市が交流継続の確認書を交わすなど成果を残した。ただ、中国2都市とは原発処理水問題の影響からか、交流事業はわずかにとどまった。
 県は事業成果を各部局の戦略に反映し、好評だったイベントや事業を次年度も継続したい考えだが、県議会の反発を踏まえ実現は不透明な状況となっている。
 (政治部・青島英治)

 <メモ>東アジア文化都市事業は日中韓3カ国の都市が文化交流を通じて相互理解と平和構築を進める目的で2014年に始まった。毎年各国で開催都市が選定され、23年は本県、中国の成都市と梅州市、韓国全州市が文化事業や交流事業を1年間展開した。国内で過去最大の事業規模となったのは東京都豊島区の事業数397件、来場者数353万人。新型コロナウイルス禍を経て国内は都道府県も選定対象都市になった。
 県は事業の性質や実施主体別に4区分を設けて展開した。12月中旬時点で都市間の「交流事業」15件、県文化局主体の「文化芸術事業」99件、県部局や民間との「協働プログラム」161件、市町や民間団体による「地域連携プログラム」691件を実施した。

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