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テーマ : 三島市

「美容業界に」 日系ブラジル人の挑戦 沼津のヴァネッサさん、来日20年 子育てしながら専門学校、支援者後押し試験合格

 約20年前にブラジル・サンパウロ市から出稼ぎで県内に来日した日系ブラジル人の仲里・ヴァネッサ・マサミさん(37)=沼津市=が今秋、美容師の国家資格試験に合格した。週3回ほど三島市内の美容室で働きながら、3年間通信制の専門学校に通った。7歳の娘の子育てをしながら、日本の支援者たちの後押しで夢への一歩を踏み出した。

カット技術などの実技を高める仲里・ヴァネッサ・マサミさん=11月上旬、三島市内の美容室
カット技術などの実技を高める仲里・ヴァネッサ・マサミさん=11月上旬、三島市内の美容室

 母国の高校を中退し、17歳で県内の車の部品製造工場で働くために来日した。派遣された県東部の複数の工場で生活の資金を稼ぐ毎日。「お金は稼ぐことができた。しかし、工場の仕事は自分のやりたい仕事ではなかった」と物足りなさを感じていた。
 転機は4年前、勤務していた工場の移転で働けなくなり現在働く美容室に採用してもらったこと。「美容業界に興味を持っていた。採用してくれたオーナーがいなかったら今の自分はいない」とヴァネッサさん。最初は受け付け業務や電話対応だったが、慣れない日本語の使い方に悪戦苦闘の日々を送った。
 陰で支えたのが、日本語教室で生活に必要な会話などを指導していたNPO法人東部パレット(沼津市)の田中夏さんだ。15年前からのつきあいといい、電話対応、試験勉強など親身にサポートしてくれた。
 試験はカット技術などの実技のほか、美容に関する知識や人体の構造、公衆衛生法などの筆記問題。専門書など7冊の教科書の内容を頭に入れようと2人で机に向かった。「専門用語の多さに驚いた。日本人でも一苦労だが、すごく頑張り屋で結果につながると思っていた」と田中さんは振り返る。
 3年間の懸命な勉強の末、合格をつかんだヴァネッサさんだが、異国の地で働きながら夢を持つことの難しさを実感し、諦めかけたこともあった。「日本語が話せないことで、仕事の選択肢が限られてしまう。でも、やりたいことがあるなら諦めないでほしい。夢をかなえる後押しをしてくれる人はきっといる」と、田中さんら支援者や家族、同僚の存在に感謝する。「ここからがスタートライン。いつか自分のお店を持ち、ブラジル人や日本人などいろんな人の居場所をつくりたい」と言葉に力を込めた。
 (浜松総局・小林千菜美)

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