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テーマ : 三島市

木片からつながる無限の善 彫刻家・高須英輔さん(熱海市)【表現者たち】

 木材を分割し、それをさらに分割し、さらにまた分割し―。繰り返しの作業の中で生まれた大小の木片をグラデーション状に積み上げた「蘇生組積[そせいそせき]」は、彫刻家高須英輔さん(77)=熱海市=が1980年代から取り組む代表的なシリーズ作品だ。木材は「『こんなのどう』と、どんどん集まってくる」と話す高須英輔さん=10月中旬、熱海市網代(東部総局・田中秀樹)
 「一つの善が二つの善に。それが無限に広がって限りなく善にあふれた世界になってほしい」
 武蔵野美術大で油絵を学び「親分子分の関係」と話す彫刻家井上武吉さん(30~97年)のアシスタントを経て30歳でデザイナーとして独立。自らの作品制作も続け、彫刻を中心に表現を模索した。「蘇生組積」シリーズの作品「蘇生組積」シリーズの作品
 「蘇生組積」のアイデアは、東京・神楽坂にある陶器店の内装デザインの依頼を受けた中で生まれた。店の内壁を地層に見立てようと、日本の伝統的な工法「洗い出し」を採用。壁面に無数の小石が組み合わさっている様子を見て、彫刻への応用を思い立った。旧ユーゴスラビアで開かれた国際彫刻シンポジウムも転機となった。現地の彫刻家の助言を受け、木材に特化した創作にかじを切った。
 10年前、横浜から移った自宅兼アトリエは熱海市網代の小高い丘の上。相模灘が一望できる。「刻々と変わる景色や通り過ぎる船がインスピレーションを与えてくれる」という。地下の倉庫には、扉や柱、床材など個々に異なる歴史やいわれを持つ杉やケヤキの古材、大事に使っているというバイカル湖に沈んでいた3万年前のナラの木が並ぶ。
 そんな木を、何度も背をたたいた跡が残る分厚い刃のナタで割る。「電動のこぎりもあるけれど、割る行為自体が木と対峙[たいじ]する意味を持つ。心が静かになる」と話す。きれいに割れるときもあれば、使い物にならないときも。「こればかりは相性だね」と笑った。
 (教育文化部・マコーリー碧水)

 蘇生組積シリーズを中心に高須さんの40年を振り返る「高須英輔展―蘇生組積 無限∞―」は三島市芝本町のさんしんギャラリー善で開催中。17日まで。

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