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テーマ : 三島市

とびら(扉) 誰もが鍵を持っている/渡辺敬彦【SPAC俳優 言葉をひらいて⑳】

 「扉」が必要。「壁」の向こう側へ行く。内から外へ。外から内へ。だから扉が必要。ムードや気分や空気の入れ替えのためには「窓」もある。みんなは今、便利な窓ばかり使っているけれど、やはり扉も必要。私自身とあなた自身が向こう側に行くために扉が必要。向こう側へ行きたい。行かねば。あっ、帰っても来なければ。やはり扉が必要。誰かに来てほしい。扉を開けよう。来てほしくない人もいる。扉を閉めよう。

(板画・麻美)
(板画・麻美)

 壁をなくしたい人々と壁を作りたい人々がいる。扉のある壁が必要。自己と他者。老若男女。国と国。できる事とできない事。東西南北。右と左。上と下。感情。思想。哲学。喜怒哀楽。理論と感覚。どこにだって壁はある。壁はあるけれど扉があれば向こう側へ行ける。扉の鍵は誰でも持っている。「ないよ」と言う人、よく探してみな。あるよ。開けたり閉めたりできる扉が必要。みんなと交ざりたくなったら扉を開けよう。1人になりたい時は扉を閉めよう。だから扉のある壁が必要。
 壁がないと全てが混ざる。とろとろ、どろどろ、ぐっちゃぐちゃ…。思想も思考も人種も性別も色も音も時間も…みんな一緒。それはないのと一緒。扉から向こう側へ行ったり来たりするのでなく、最初からみんな一緒。その方が良いのかな? 否、否、否。やはり、扉が必要。心の扉、物質の扉、知覚の扉…「扉」が必要。
   ◇
 私は幼いわが娘の食べ残しをもったいないから食べてます。でも、彼女がぐちゃぐちゃに混ぜて食べていたカレーライスだけは、どうしても食べられない。…不味[まず]そうで…。味覚の「扉」が必要…。

 わたなべ・たかひこ 三島市出身。2010年「ペール・ギュント」よりSPACに参加。19年「RITA&RICO」では演出を手がける。多田淳之介演出「伊豆の踊子」に出演中。

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