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テーマ : 三島市

輝く時代の作品凝縮【しずおか連詩の会2023 私のはじめての詩集①詩人・野村喜和夫さん】

 1999年から続く毎年恒例の文学イベント「しずおか連詩の会」が11月、三島市で開催される。現代詩は奥行きがある一方で、入り口が見つけにくいジャンル。そこで、今回参加する詩人・歌人の5人に「はじめての詩集」を薦めてもらう。初回はさばき手(まとめ役)の詩人野村喜和夫さん。

野村喜和夫さん
野村喜和夫さん
野村喜和夫さん


 「現代詩の鑑賞101 新装版」(1998年、新書館)=写真=は、第2次大戦後の日本における代表的な詩人55人の101編を収録。編者の大岡信さん(三島市出身)に加え、野村喜和夫さん、高橋順子さん、八木忠栄さんの3詩人と文芸評論家三浦雅士さんが詳細な解説を記した。  1996年初版のアンソロジー(撰集[せんしゅう])。四半世紀以上前の本ですが、当時のメインストリームの詩人を網羅する内容で、現代詩の初心者に最適です。
 及川均さん(1913~96年)を筆頭に、戦後に活躍した代表的な詩人の代表作を集め、解説を加えています。読者にとっては未知の詩人、未知の作品と出会う場となることでしょう。
 90年代の半ばに、戦後詩の半世紀をレトロスペクティブに振り返る内容。これは一つの「歴史」なんですね。2023年の現在は、発刊からさらに四半世紀が過ぎている。このアンソロジーは、そうした現代詩の歴史を、現在の詩の世界に導き入れるという役割があると思います。
 一方で、掲載された作品が「歴史化」しているケースもありますね。伊藤比呂美さん(1955~)の「歪ませないように」のような(白玉を男性に食べさせる)女性像は、現在は描かれないでしょう。吉野弘さん(26~2014)の「I was born」は現代詩の古典ですが、最近は男性中心的な生命観がフェミニズム論者から批判されている。当時の価値観が、今の世の中では通用しないわけです。歴史を学ぶという意味でも、こうしたアンソロジーは貴重ですね。
 ここには現代詩が輝いていた時代の詩が凝縮されています。若い方にも読んでほしいですね。
 (談)

 11月、三島で開催  2023年の「しずおか連詩の会」(県文化財団など主催、静岡新聞社・静岡放送共催)は11月9~11日に三島市内で創作を行う。参加者は野村喜和夫さん(詩人・本紙読者文芸選者)、田原[でんげん]さん(詩人)、岡野大嗣さん(歌人)、文月悠光さん(詩人)、小野絵里華さん(詩人)。発表会は12日午後2時から同市民文化会館で。入場料は1000円。問い合わせはグランシップチケットセンター<電054(289)9000>へ。

 のむら・きわお 1951年生まれ。詩集に「風の配分」(高見順賞)「ニューインスピレーション」(現代詩花椿賞)「ヌードな日」(藤村記念歴程賞)「花冠日乗」など。評論も多数。2023年、第4回大岡信賞。

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