テーマ : 医療・健康

後発品不正相次ぎ 医薬品製造の監視強化 静岡県、品質確保へ全施設に無通告査察

 国内のジェネリック医薬品(後発薬)メーカーによる製造工程での不正が相次いだことを受け、静岡県が静岡県内の製造業者に対する監視体制を強化している。医薬品の供給不足が続く中、全国トップクラスの医薬品生産県である本県で重大な問題が発生すれば、医療現場などに深刻な影響を及ぼしかねないためだ。無通告の査察などを通じ、品質確保の取り組みや法令順守の体制づくりを後押しする。

医薬品製造施設への査察で品質管理体制を調べる担当者=静岡県中部
医薬品製造施設への査察で品質管理体制を調べる担当者=静岡県中部

 後発薬を巡っては全国のメーカーで不正やトラブルが相次ぎ、県によると、2021年2月以降、全国16事業所が業務停止や業務改善命令を受けた。生産が停滞したところに、新型コロナウイルスなどの感染拡大が重なり、さまざまな医薬品の供給不足を招く事態となっている。
 業界への信頼が揺らぐ中、県は監視指導の強化に乗り出した。無通告の査察を導入したのが柱で、24年度までに県内全ての医薬品製造施設(52施設)に対して実施する計画だ。
 23年10月末までに完了した37施設では、試験の捏造(ねつぞう)や組織的な隠蔽(いんぺい)といった重大な違反事項は確認されなかったという。ただ、一部で記録の未作成などの不備が見つかり、必要に応じて複数回の査察を実施する。原薬の抜き取り検査や監視員の査察技術向上にも取り組む。
 不正を招いた要因の一つに、品質管理に関する法令順守の意識が欠如していたとの指摘もあり、県製薬協会と連携して研修にも取り組んでいる。経営層、品質保証部門、試験検査部門など対象者ごとに研修を開き、安全な製品づくりを支援する。これまでにオンラインを含めて延べ約4700人が受講した。
 本県は大手製薬会社が製造拠点を構え、21年の医薬品生産額は6998億円と埼玉、栃木県に次ぐ全国3位だった。静岡県薬事課の担当者は「本県で問題が発生すれば医療現場や流通でダメージが大きい。監視体制の強化とともに、品質確保の取り組みを現場にフィードバックしていくことで医薬品の品質向上につなげたい」と話す。
 (政治部・森田憲吾)

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