テーマ : 医療・健康

腸内フローラの好物は?【未来は腸内細菌とともに⑨】

 腸内フローラの餌は消化吸収されず大腸に届いたもの、と前回お話ししました。具体的には「食物繊維」です。細菌たちがそれを食べて作ったさまざまな代謝物質は腸内環境を整えてくれます。さらに免疫系や代謝系にも働きかけ、大腸炎やアレルギーを抑制し、脂肪の蓄積を抑え、糖尿病を改善し、と多くの効能も報告されています。

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 食物繊維が豊富な食材としてはまず、ゴボウやキャベツなどの繊維質の野菜が思い浮かびます。でも実はキノコや海藻、豆、果物、穀物などにも多く含まれます。
 さらに食物繊維は穀類や海藻、芋類、バナナやキウイなどの果物に多い水に溶ける水溶性食物繊維と、キノコやゴボウなどに豊富な水に溶けない不溶性食物繊維とに分けられ、それぞれに大切な機能があります。
 水溶性食物繊維は腸内フローラに食べられることで、腸内での発酵につながり、短鎖脂肪酸と呼ばれる身体に良い代謝物質が生まれます。不溶性食物繊維は水分を含んで膨らむことで腸を刺激して排便を促し、さらに腸内の糖質や脂質をからめ捕って排せつしてくれるため、血糖値改善や抗肥満効果も期待されます。
 中でも海藻は、水溶性と不溶性の両方を含むため、腸内環境を整えるのに適しています。海藻を食べる文化がある日本人の腸には海藻を分解する遺伝子を持つ細菌がいると報告されていますが、食習慣がない欧米人の腸にはそんな細菌はいないことが分かっています。
 消化吸収されずに大腸まで届く物質には、食物繊維のほかにオリゴ糖やイヌリン、β-グルカンなどがあります。このような「大腸に届き腸内細菌に利用される炭水化物」は総称してMACsと呼ばれます。その中でも、腸内細菌の餌となることで私たちの健康を増進してくれる食品成分は「プレバイオティクス」と呼ばれます。
 伝統的な和食は、そんな食品成分を含んだ食材をたくさん使っていたため、日本人は意識せずとも腸内フローラに良い餌を送り続けていました。しかしこの60年ほどで、日本人の食生活は大きく変化して欧米化が進み、腸内フローラのバランスの乱れやそれによる生活習慣病などのリスクも上がったと考えられます。
 実は、細菌たちは餌の好き嫌いが激しいのです。そのため、自分の腸内細菌に合う食事をして、彼らがしっかり活躍できる状態にする必要があります。個々人に合った腸活については今後、詳しくお話ししましょう。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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