テーマ : 医療・健康

不潔への不安 過剰な確認 強迫性障害 見過ごすと重症化の恐れ

 不潔を気にして手を洗い続けたり、施錠を確認するため何度も玄関に戻ったり…。強迫性障害は、自分でも変だと気づいているのに、不安が高じて同じ行為を際限なく繰り返してしまう心の病気。専門家は「行為がやめられず、生活に支障があると感じた場合は、早めに受診してほしい」と呼びかけている。 

絵・さとうまなぶ
絵・さとうまなぶ
「これがなかったら、生活が楽になるのにと思ったら、一度、医師に相談してみるといい」と話す田中克俊教授
「これがなかったら、生活が楽になるのにと思ったら、一度、医師に相談してみるといい」と話す田中克俊教授
佐藤陽さん
佐藤陽さん
佐藤陽さんの著書「手洗いがやめられない」
佐藤陽さんの著書「手洗いがやめられない」
絵・さとうまなぶ
「これがなかったら、生活が楽になるのにと思ったら、一度、医師に相談してみるといい」と話す田中克俊教授
佐藤陽さん
佐藤陽さんの著書「手洗いがやめられない」

 精神科医の田中克俊・北里大大学院教授は「強迫性障害は特殊な病気ではありません。放置すると悪化することもあるので、注意が必要」と話す。
 過剰な手洗いの他にも、物事の正確さに極度なこだわりを見せたり、自分の体調や健康を異常に気にしたり、さまざまな症例がある。人によっては家族を巻き込み、周囲を疲弊させてしまうケースも珍しくない。
 田中教授が比較的多いと指摘するのは、うつ病を併発するパターンだ。
 新卒で入社した20代の女性の場合、責任感が強く、真面目な性格で、元々施錠や火の始末を気にするタイプだったが、入社後にその傾向がエスカレート。点検を終えた書類や封書の宛名などを際限なく確認し、やがて仕事に支障を来すようになった。
 上司から「やり過ぎだ」と言われてもやめられず、自己嫌悪からうつ病となり、症状は悪化。女性は休職を余儀なくされた。投薬を中心に治療を続け、しばらくして症状は緩和した。
 田中教授は「多くの場合、心配性だからと性格の問題にしてそのままにするケースがある」と注意を促す。
 ただ、どこからが病気なのか、当人には判断が難しい。自らの強迫性障害の体験をつづった「手洗いがやめられない」(星和書店)の著者でジャーナリストの佐藤陽さんは「仕事でも家庭でも、本人や家族の日常に支障が出てきたと感じたら、そこが一つのタイミングと思う」と話す。
 佐藤さんも、最初は性格の問題と考えていた。不潔への恐怖から、ひどい時期で4時間も手洗いとシャワーをするようになり、仕事で外出中に公衆トイレが使えず、漏らしてしまうほど症状が悪化。佐藤さんは現在、治療のかいもあって日常生活にほぼ支障のないレベルまで改善している。
 なかなか病院に足が向かなかった佐藤さんが受診を決意したのは、延々と続く流しの水の音に妻が耐えられなくなったことがきっかけだったそうだ。
 田中教授は「強迫観念は多かれ少なかれ誰にでもあり、何がきっかけで増悪するかは分からない。過度に気にする必要はありませんが、自分でもおかしいと気付いたら、迷わずに医師に相談してください」としている。

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