テーマ : 医療・健康

治療標的の遺伝子変異15% がん種ごとに大きな差

 国立がん研究センターは29日、国内の約5万例のがん遺伝子検査データを調べたところ、治療薬の標的となる遺伝子変異などがあったのは、全体の15・3%だったとの分析結果を発表した。薬が見つかるのは1~2割とされていた当初の想定に合致する結果。がんの種類によって割合が大きく異なることも明らかになった。
 患者ごとにがんの遺伝子を調べて治療する「がんゲノム医療」が実用化されている。これまで欧米のデータを分析した研究はあったが、日本人を主な対象にしたのは初めて。日本人に多い胆道がんや胃がん、子宮頸がんなどを含めた結果が判明した。
 チームは、100種類以上の遺伝子を一度に調べ、効果のある薬を見つける「遺伝子パネル検査」のデータを活用。2019年6月~23年8月に、がんゲノム情報管理センターに集められた4万8627例を分析した。
 がん種別で治療薬の標的となる変異などが見つかる割合は、甲状腺がんの85・3%が最も高く、浸潤性の乳がん60・1%、肺腺がん50・3%が続いた。割合が低いのは唾液腺がん、脂肪肉腫、腎細胞がんで、いずれも0・5%未満だった。
 米国白人のデータと比較すると、治療薬の標的となる変異などが見つかった症例の割合は3分の2程度だった。日本人に多いがん種で、治療薬開発が不十分なことが少ない原因とみられる。
 国立がん研究センターの片岡圭亮・分子腫瘍学分野長は「がんゲノム医療の臨床的な有用性や、欧米との違いが明らかになった。日本人に多いがんでは、治療薬に結びつくことが少ない。重点的に開発を進める必要がある」と話している。
 成果は米科学誌「キャンサーディスカバリー」に掲載された。

 がんゲノム医療 患者から、がんの組織や血液を採取して解析し、がんの原因となる遺伝子変異などを特定、効果が見込める薬を選んで治療する医療。国内では、100種類以上の遺伝子を一度に調べる「遺伝子パネル検査」が2019年6月に保険適用された。検査結果は患者の同意の上「がんゲノム情報管理センター」に集められている。検査の対象は、標準治療をしても効果が得られなかった固形がんや、標準治療のない希少がんと原発不明がんの患者らとされている。

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞