テーマ : 医療・健康

【科学する人】精子バンクの再開目指す 男性の不妊治療に取り組む 岡田弘さん㊦

 不妊に悩む夫婦に最善の治療を行うことを目指してリプロダクションセンターを立ち上げた岡田弘さん。2021年には国内初の民間精子バンク「みらい生命研究所」を設立した。交流サイト(SNS)上での不透明な精子提供の個人間取引に危機感を感じ、トラブルを防ぎたい思いで始めた事業だった。
2023年3月に活動休止した国内初の民間精子バンク「みらい生命研究所」(岡田弘さん提供)
精子バンク再開の条件などを語る独協医大の岡田弘さん=埼玉県越谷市
 20年に岡田さんが日本語で精子提供をうたう140件以上のサイトを調査したところ、9割を超えるサイトに感染症検査についての記載が無いなどの不備が確認された。
 みらい生命研究所はドナーを医療関係者に限定し、1件約5万円で医療機関に精子を提供した。しかし採算が取れるまでに時間がかかることや、提供精子を巡る法整備が進んでいないこと、一般的な運送会社で精子が取り扱われにくいなど多くの問題が立ちはだかり、23年3月末で活動を中止せざるを得なかった。「生まれてくる子どものことを一番に考えると、今の状態で続けるのは難しかった」と声を落とす。
 2年間で60人から提供を受けた精子は大学に移して保管しており、法律が整うことを条件にバンクを再開したいと考えている。「安全な方法で良好な精子を提供することが、男性不妊に長年関わってきた自分にできる社会貢献だと思う」。岡田さんは言葉に力を込めた。

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