テーマ : 医療・健康

フローラ 外からの影響反映【未来は腸内細菌とともに⑦】

 私たちの体に影響を与える腸内フローラはどのように作られるのでしょう。影響するものには食事、出生経路、生活環境、生活習慣、薬物、加齢などがあります。言うまでもなく、食事は大きな要因ですが、それは次回以降にたっぷりと。

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 まずは出生経路。人は胎内では無菌状態ですが、生まれる瞬間に母親からさまざまな菌を受け継ぎます。経膣分娩[ぶんべん]なら産道を通る際に口や鼻から菌を取り入れ、帝王切開なら母親の皮膚にいる常在菌をもらいます。興味深いことに、帝王切開で生まれても、爪の先ほどの母親の便を母乳に混ぜて飲ませると経腟分娩型のフローラに近づくとの報告もあります。
 では父親は? そこに生活環境が関係してきます。細菌が伝わる経路の一つに家族での入浴があり、父親が子を風呂に入れることも多い日本では、シャワーで済ませる海外と異なり、父子間でもフローラが受け継がれるとの報告があります。
 同居は腸内細菌がシェアされる重要な因子です。例えば宇宙ステーションの乗員はフローラが似てくるといいます。閉鎖空間に漂う微生物にさらされることが影響するとみられます。
 生活習慣では例えば運動習慣。プロのラグビー選手はさまざまな種類の腸内細菌を持ち、それらが作り出す、健康に有益な短鎖脂肪酸が多いことが知られています。
 薬物も大きな要因で、最も影響するのは抗生物質です。病原菌を減らすため使われますが、元々腸内にいた良い細菌まで殺してしまいます。一時的な使用なら3カ月程度で元に戻るとされますが、長く使うとフローラの乱れや多様性の減少、腸内代謝物質の変化などの副作用が現れます。
 加齢に伴い腸内フローラも変化します。この現象は1970年代から言われていましたが、近年の最先端技術を使った解析でも確認されました。原因としては、免疫系や消化吸収能力の低下などが挙げられています。
 腸内フローラの形成過程で遺伝的要因の影響はごくわずかで、大部分は環境要因です。口から肛門までは一つの長いホース状のため、腸内細菌がすむ腸管内は「内なる外」。体内にありながらも、実は外にさらされている体の最前線です。それゆえ外部環境の影響を受けやすいのです。
 このように、腸内フローラはさまざまな要因や個人のライフスタイルで形成されると分かってきました。次回は食事で作られる部分を詳しくお話しします。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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