テーマ : 医療・健康

情報豊富な「茶色い宝石」【未来は腸内細菌とともに④)】

 腸内フローラを知るため私たちが分析するのが、日々排せつされる「便」、つまり「うんち」です。健康な便は3分の2が水分。残りの半分が未消化物や腸の細胞、残り半分が腸内細菌となります。分析技術の進歩で、血液検査でも分からない超早期の病気や未病状態が便の分析で分かる可能性も出てきました。

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 古代中国では皇帝の便を調べる係がいたほど。便は当時から、健康状態を教えるカルテのような役割を果たしていました。現代のトイレでは、便を見る前に自動で流れてしまうかもしれませんが、腸内細菌がたくさん詰まった便を観察することが、実は手軽なヘルスケアの第一歩なのです。
 食べた物が便になるまで24~72時間。成人で約7・5メートルある口から肛門までの消化管を通過中に、その人の生活習慣や内臓の状態、感染症の兆し、罹患[りかん]の恐れがある病気などの情報が集まり、便に詰め込まれます。つまり便は究極の個人情報なのです。健康なら通常は安定し、日々観察すれば、自分の健康状態の変化にいち早く気付けます。
 普段、他人の排便の様子を知る機会はないでしょうし、誰しも自分が標準だと思いたいかもしれません。でも機会があるたびに私が聞き取った限りでは、健康な人でも排便は数日に1回から一日に数回まで、かなりの開きがありました。
 では理想の便とは? それはバナナ状のものです。水分や食物繊維をほどよく含み、黄褐色なのは胆汁が正常に分泌され、消化管で出血がなかった健康の印です。こんな便が出た時の食生活を覚えておきましょう。
 体調不良のサインは便の色や臭い、硬さに出ます。赤い便は直腸や肛門付近で出血があり、痔[じ]や大腸がんを考えます。暴飲暴食や黄疸[おうだん]、貧血で胆汁が腸でうまく吸収されないと便が緑になります。ただ乳幼児では単にミルクの影響のことも。
 便秘なら便は硬く、こげ茶色に。排便が週に2回以下で便秘と診断されますが、便が腸内に滞留すると、本来排せつされる毒素が血液に戻って全身を巡り、肌荒れなどを引き起こすのです。
 食習慣や生活習慣を変えていないのに、便が猛烈に臭くなった場合も要注意です。水様状の下痢は、食事や服薬による腸内フローラのバランス異常や感染症が起きている可能性があります。
 このように健康のための情報源である便を私は「茶色い宝石」と呼んでいます。便から健康社会を生み出すことが可能になってきているのです。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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