テーマ : 医療・健康

突然死呼ぶ 大動脈瘤破裂 自覚症状なく 早期発見で予防治療

 心臓から送り出された血液が最初に通る大動脈にできたこぶが破れる「大動脈瘤[りゅう]破裂」。大量出血で突然死の危機となるが、それまで自覚症状がなく無警戒の人が多い。予防治療は可能なだけに、いかに動脈瘤の存在に気付くかが鍵になる。

カテーテル治療を受けた66歳男性のCT画像。治療前(左)は腹部大動脈の分岐部にあった直径5・5センチのこぶが、ステントグラフト(緑色)を入れた後は見えなくなった(慶友会つくば血管センター提供)
カテーテル治療を受けた66歳男性のCT画像。治療前(左)は腹部大動脈の分岐部にあった直径5・5センチのこぶが、ステントグラフト(緑色)を入れた後は見えなくなった(慶友会つくば血管センター提供)
大動脈瘤と暮らす注意点
大動脈瘤と暮らす注意点
カテーテル治療を受けた66歳男性のCT画像。治療前(左)は腹部大動脈の分岐部にあった直径5・5センチのこぶが、ステントグラフト(緑色)を入れた後は見えなくなった(慶友会つくば血管センター提供)
大動脈瘤と暮らす注意点

 大動脈は心臓から上に出た後、Uターンして下に向かう人体で最も太い血管。ステッキのような形状で、心臓に近い胸部大動脈は直径約3センチ。各臓器へ向かう動脈を分岐しつつ徐々に細くなり、下流の腹部大動脈は約2センチで、へその辺りで両脚への動脈に分かれる。
 常にかかる高い血圧で、動脈硬化で弱くなった部分が膨らみ、直径が元の1・5倍を超えると大動脈瘤と診断される。放置すると徐々に成長し、最後は破裂する。
 「胸部で6センチ、腹部では5センチを超えると破裂の危険が高まる」と茨城県守谷市の慶友会つくば血管センターの岩井武尚顧問は語る。高齢化で患者は増えており、女性より男性、胸部より腹部の方が発生頻度が高い。

 歯周病菌も要因
 動脈硬化が関わるだけに高血圧や高脂血、喫煙、睡眠時無呼吸など多くのリスク要因が挙げられるが、岩井さんは「歯周病菌も関与する」と指摘する。動脈の膨張を抑える内弾性板という組織を壊す歯周病菌も見つかっており、動脈瘤の患部からは血流に乗ってたどり着いた歯周病菌の遺伝子が多く見つかるという。
 動脈瘤が破れると激痛が襲い、大量出血でショック状態になる。「腹部大動脈なら半分は即死。病院に運ばれてもその半分しか助けられない。このため破裂前に治療するのが鉄則」と岩井さん。
 ただ厄介なことに、破裂前は痛みや不快感などの自覚症状はほぼない。腹部大動脈瘤が大きくなると上腹部に拍動のあるこぶを感じたり、胸部大動脈瘤では神経や食道を大きくなったこぶが圧迫してしゃがれ声や誤嚥[ごえん]が起きたりすることもあるが、それでも健診などでのCTや超音波の検査で偶然、見つかるケースがほとんどだという。

 人工血管で対応
 幸運にも早期発見できたらまずは経過観察となる。「動脈瘤を小さくする薬はまだない」(岩井さん)ため、減塩食などの生活改善と薬で血圧を管理し、こぶの成長を抑える。それでも大きくなってしまったら、人工血管への置換手術かカテーテル治療となる。
 20世紀半ばに開発された人工血管は症例を重ねて安全性は確立している。ただ、人工心肺を使って血管を取り換える大がかりな手術で、体への負担は大きく、体力的に難しい人も。
 もう一つは、筒状の金属網で内張りした人工血管ステントグラフトをカテーテルに仕込み、脚の付け根の動脈から患部へ運び広げる。普及したのはこの10年ほどだが、体の負担は小さい。
 どちらを選ぶかは動脈瘤の位置や形態、さらに患者の状態で決めるが「近年はほとんどがカテーテル治療になっている」(岩井さん)という。破裂前に治療すれば、命を落とす心配はなくなるだけに、早期発見が命を救う。岩井さんは「動脈硬化が気になる年齢になったら、CTや超音波での大動脈検査も考えて」と訴えている。

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