テーマ : 医療・健康

微生物からの贈り物【未来は腸内細菌とともに⑪】

 「身体に良い」「腸に良い」と言われる食品の代表格が発酵食品。では、なぜ良いのでしょう?

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 発酵とは「微生物が食べ物を分解する過程でヒトに有益な成分を作る」ことを言います。実はこの現象は、ものが腐るプロセスと同じなのです。ヒトに有益なものが作られることを「発酵」、有害なものが作られることを「腐敗」と呼び分けているのです。
 例えば、発酵食品のヨーグルトでは乳酸菌が乳に含まれる乳糖を、みそではコウジカビが大豆のタンパク質を、それぞれ分解して発酵することでできあがります。
 このように、発酵食品は微生物たちからの“贈り物”なのです。同じような現象は、われわれの腸の中でも起きており、私たちはそれを「体内発酵」と呼んでいます。大腸にいる腸内細菌が、食物繊維などの食べた物の残りかすを分解する過程で、ヒトの健康維持に寄与する有益な成分を作り出す現象です。われわれはいわば「歩く発酵タンク」なのです。
 食べ物はまず口で細かく砕かれ、食道、胃、十二指腸を経て小腸に運ばれます。そこで小腸の粘膜層が分泌する消化酵素によってアミノ酸やブドウ糖、脂肪酸などの栄養素に分解され、それらは体内に吸収され血液に乗って全身を巡ります。
 一方、吸収されなかった食物繊維などの未消化物は大腸に運ばれ、ミネラルと水分が体に吸収され、残りが便として排出されます。腸内細菌はこの過程で未消化物を分解することでエネルギーを得て生きています。ここで発酵が起きるのです。
 腸内細菌が発酵で作る体に良い成分の代表が「短鎖脂肪酸」です。腸内における短鎖脂肪酸の量は、腸内で発酵がどのくらい活発に行われているかの指標であり、腸内環境の状態を判断する一つの基準にもなります。
 それでは、どのようにして腸内細菌に活発に発酵してもらうか。腸内環境は人によって異なり、どのような種類の細菌がどのくらいいるかはさまざまです。腸内細菌が十分に発酵できるようにするには、彼らが活動しやすい環境、つまり彼らに適した餌を十分に与えることが重要です。
 短鎖脂肪酸を作ってくれる腸内細菌を腸内に数多く定着させ、彼らの好物の餌を与えれば、体内発酵が盛んに行われ、健康維持に良い影響を与えてくれます。
 この短鎖脂肪酸は本当に万能なんです。次回から2回にわたり、短鎖脂肪酸に注目すべき理由をお話ししましょう。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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