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分娩病院半数で「宿日直許可」 休息とみなし労働時間とせず

 勤務医の残業規制が今年4月から始まることを踏まえ、日本産婦人科医会が昨年夏に実施した就労実態の調査で、分娩を扱う全国の病院947施設のうち半数超の479施設が、夜間の宿直や休日の日直を待機中の休息とみなして労働時間に算入しない「宿日直許可」を、労働基準監督署から取得済みか申請中と回答していたことが、31日までに分かった。

分娩を扱う病院の「宿日直許可」取得状況
分娩を扱う病院の「宿日直許可」取得状況

 医会の勤務医委員長を務める関口敦子医師(59)は「夜間でも頻繁な診察や緊急手術があり、妊婦の経過観察も気を抜けず、休息扱いは実態と懸け離れている」と指摘。調査結果について、各病院が残業規制で業務に支障が出ないよう、見かけの労働時間を少なくする「苦肉の策」を取ったとみる。実効性を伴う医師の働き方改革に向け、国も実態把握を進める必要がありそうだ。
 同医会が2月に公表した調査報告によると、分娩を扱う全病院947施設にアンケートを送り、654施設が回答した。医師が夜間に泊まり込む「当直」は1人当たり月平均7・9回で、1回16時間で換算すると年約1500時間。労働とみなさなければ残業は年平均230時間余りとなり、規制上限の年960時間を下回った。
 宿日直許可は303施設が取得済みで前年の調査(99施設)から急増。176施設が申請中と回答した。新生児の集中治療室を備え、24時間体制で高度な医療を提供する「総合周産期母子医療センター」では、回答した84施設のうち75%に当たる63施設が取得済みか申請中とした。
 本来、宿日直許可は、突発業務がまれで休息が十分取れる場合に限られる。調査報告では、多くの病院が「十分に休める」と労基署に主張し、許可を取らざるを得なかったのではないかと考察している。
 宿日直許可の取得は、勤務医の残業規制を前に産婦人科以外でも増加。厚生労働省によると、2021年は全国の医療機関で233件だったが、22年は1369件に跳ね上がった。関口医師は、負担減に向けた根本的な対策が必要だと強調。「助産師らに医師の仕事の一部を任せるタスクシェアなどを進めるべきだ」と訴えた。

 医師の働き方改革 働き方改革関連法に基づき勤務医の時間外・休日労働を年960時間までに規制する。一方で暫定措置として、救急医療やへき地医療を担う医師、研修医らの上限は年1860時間とする特例を設けた。特例は解消や縮小を目指す。時間外労働の上限規制は2019年度から各業種で始まったが、医師には診療を原則拒めない応召義務があり、5年間適用が猶予されていた。

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